未完成恋愛シンドローム - 片翼 --2
「恥ずかしがることないやん?」
恥ずかしい?
「あ」
「いやー、自分の兄貴が1日何回せんずりこくんとか、興味あるやん」
カイトは言葉を挟もうとしたオレに、更に言葉を重ねる
「いやあの」
「ん?」
ようやく割り込むことに成功したらしい。
「あのな」
「せやから別に恥ずかしがることじゃ」
「そもそも」
「ん?」
「オナニーって・・ナニ?」
―間
「・・?」
オレの発言がよほど想定外だったんだろうか。何故か固まるカイト。
・・それほど変な質問したかオレ?
と言うか、せんずり?最初オナニーって言ってた気が・・・。
「カイト?」
「イヴ・・・」
「なに?」
「もしかして・・オナニーしたことないん?」
・・・。
なんか、カイトの瞳がさっきとは違った輝きを放ってる気がする。
「んー・・」
取り敢えずココは正直に答えるべきだろうか。
「ないけど。・・・なに笑ろてんねん」
なにがおかしいのか、うつむいて笑いをかみ殺すカイト。なんか、軽く腹が立つ。
「いや・・・やっぱ」
「あ?」
「いいなあ、イヴは」
―どういう意味や。
「つか、なんやねん、オナニーて」
軽く横目で見ながら聞いてみる。
「んー?知りたいー?」
別に興味があった訳じゃない。
が、なんかムカつく。
「ね、知りたい?」
「・・教えて」
気がついたらオレは、そう言っていた。
「ほら、早くズボン脱いで」
「・・・」
「ほらイヴー」
「・・どーしても脱がな出来んの?」
「うん」
ニコニコしながら無茶なことを言うカイトに、オレは正直本気で後悔していた。
自分がやってあげると宣言したカイトは、まずオレにズボンと下着を脱ぐように言い放ったからだ。
「・・・」
半ばヤケクソ気味に、半分は諦めながら、オレはベルトを外し、ジッパーを下ろし、ボタンを外す。
「ちゃんと脱いで」
「判ってる・・」
軽く躊躇したのを見て取ったのか、すかさずカイトが行為を促す。
意を決し、ズボンの腰に指をかけ、少しずつ下ろしていく。座りながらのせいか、ちょっと脱ぎにくい。
「・・。焦らしてんの?イヴ」
「ちゃうわ」
いつの間にか、さっきまでのニコニコ小悪魔フェイスではなく、口元だけで薄く笑っているカイトの表情に気付く。
表情が変わったことにすら気付かないほど緊張しているんだろうか・・。