夏の終わりにA-7
「これは作業着。絵を描く時に使ってるの…変?」
篠原は両手を広げ、おどけた顔で訊いた。
「い、いえ…いつもと雰囲気が違うなあって…」
「ふーん、まあ、いいわ」
焦って答えた私の言葉を、篠原は軽く受け流して、
「…じゃあ始めましょうか」
屈託の無い笑顔で見つめられた時、私は心をすくませた。
「…モデルって…何を?」
「そうね。まず脱いでくれる」
「…ああ、やっぱり…」
「やっぱり?」
私の嘆き声に篠原は不可解な顔をする。
「…いえ…」
篠原の求めが自分の考えたままだったが、いざ、現実となると気持ちは躊躇した。
「先生…その…脱ぐって…全部ですか?」
「当然、全裸よ」
篠原は楽しそうに答えた後、真剣な眼差しで私を見た。
「砧君、あなた何か勘違いしてるわ。裸体というのはね、骨格や筋肉を表現する美しいモノなの。
私はその美しいモノをキャンバスに描きたいの」
強い口調で熱弁をふるう篠原に、私は決心せざるを得なかった。
「…分かりました。ここで脱いでいいんですか?」
「そのイスの背もたれに服を掛けなさい」
私はシャツを脱ぎジャージを取った。残るはパンツだけ。
チラリと篠原の方を見ると、彼女は足を組んでジッと凝視している。
「さあ、早く」
私は覚悟を決めて最後の1枚を脱いだ。途端に篠原は席を立って近寄った。
「…いいわ。まったく無駄が無い身体…イメージ通りよ」
彼女は上気した顔で、私の身体をベタベタと触れてきた。
「せ、先生…やめて下さい…」
それからの1時間、私は数種類のポーズをとらされた。
その間、篠原は射るような目つきで私を描いている。その目で見つめられているうちに、私の身体は反応してしまった。
「……今日はこれくらいにしましょうか」
篠原の手が止まり、表情が緩む。私はガマン出来なくて彼女に近寄った。
「…先生…これ…」
私はイスに腰掛ける篠原に、硬く立ったペ〇スを近づける。
「…本当にいやらしい子ね…ひとが真面目に創作やってるのに…
で?どうして欲しいの」
その時、私の中には、昨夜、愛理に抱いた感情が生まれていた。
「…せ、先生の…アソコを見せて…」
「エッ!?だけど…」
私の願いに篠原は戸惑うが、
「でも!先生は最初からボクのを触ったし、今日だってボクは裸になって…」
私は感情的に言って篠原に迫った。彼女の肩に手を掛けると、これまで見せた自信の塊みたいな一面は未塵もなく、かわりにうろたえが見て取れた。