Bound for heaven-2
『あげる』
そう言って1人が1枚のコインを差し出すと、後の2人もそれにならい私にコインを差し出す。
受け取れない。
彼らだってコインを3枚しか持っていない。
私に1枚渡すと彼らが降りられなくなる。
私は黙って首を横に振る。
『あげる』
彼らは暖かな笑みを浮かべていた。
私はコインを受け取る。
計4枚のコインが私の手元にある。
彼らに礼を言い、私は電車を降りた。
あまった1枚のコインを握りしめ電車を振り返ると、電車はグングンと空高く、金色の雲の向こうに消えていった。
気がつくと自分の部屋にいた。
どうやら夢を見ていたようだ。
床には薬の瓶が転がっている。
…そうだ。
私は睡眠薬を飲んで自殺をしようとしたんだ。
会社が倒産し、仲間だと思っていた奴らにも裏切られ、絶望しか感じられなくなった後の選択だった。
現実に戻ると、また悲しみが私を襲う。
その時違和感に気がついた。
右手が握り拳をつくっている。
恐る恐る手を開いてみる。
そこには自分の体温で温められたコインがあった。
私は溢れ出る涙を止めることができなかった。