冬の観覧車(第一話)-6
「何が?」
「エッチしたの、初めてでしょ?」
「なんでわかるの?」
「なんとなく。どうなの?」
「そうだよ」僕は頷く。「サクラは違うの?」
「違うよ」
「俺で何人目?」
「そんなこと聞きたいの?」サクラは面倒くさそうに言う。
「聞きたい」
「五人目」
「俺が、五人目?」
「そう。ジン君が五人目」
「一人目は?」
「中学の先輩。無理やりやられた。あの野郎。中出ししやがったんだ」
「妊娠した?」
「まさか。やめてよ。冗談じゃない。あ。ジン君私にも煙草ちょうだい」
僕はサクラに煙草をくわえさせ、火をつけてやる。
「二人目は?」
「中学の先生」
「先生? 凄いね。三人目は?」
「うーん。聞きたい?」
嫌な予感がした。うん、と言った後で。
「隆二」
体中の血流が逆流した気がした。隆二? 隆二が三人目?
「それは、あの隆二?」
「多分、その隆二」
「俺の親友の?」
「そう。ジン君と仲良しの」
「それは、いつ?」
「中学校卒業した日」
「ふうん」僕はなんでもない風を装う。「付き合ってたの?」
「ううん。ただ、しただけ」
「今もしてる?」
「たまに」サクラは悪戯っぽく笑う。「そのうち三人でしちゃおうか」
「まさか」僕は笑う。「そんなの勘弁だ」
「あはは。冗談だよ」そう言って、サクラは僕にキスをした。
サクラの愉快そうな笑い声を聞きながら、僕はもう一口煙草を吸ってみる。
煙は、それでもやっぱり僕の意図した場所とは別の場所に吸い込まれ、
僕はむせて、咳が出る。それと、ほんの少し涙も。
十五の秋。
初めてセックスをして、初めて煙草を吸って。
後は、なんだかよく分からない感情があった。