好奇心よりもっと…-3
「俺から、逃げないで」
齋藤の言葉に顔を上げると、思ったよりも近くに齋藤の目があった。
…私は好奇心以上にこの目を求めてた。
「も…斉藤の顔見るの無理…」
「なんで」
「だって…あんなことしちゃって…恥ずかしい」
「いや、恥ずかしいのは俺なんだけど」
それもそうだな、と思って少し笑ってしまった。
齋藤も少し笑って、本を置き、私の両手を持った。
「笠井、俺が昨日考えて…考え付かなかったこと、聞いてくれる?」
「…何?」
齋藤は軽く深呼吸をした。
「俺は、昨日のことは正直ラッキーとか思ってる。
俺は前から、昨日の事があるよりずっと前から…
……笠井が好きだ。
掴みどころがなくて、何考えてるのか分かんないところとか、
自分で自分のこと平凡だって思いこんでる所とか」
………………嘘っ
齋藤が…私のこと好き…?
そんな、手品みたいなこと本当にあるの?
嬉しくて混乱して、
齋藤の顔を見たらなんでか涙が出てきた。
***
さっき少し笑ってくれたので安心したと思ったら、今度は泣いてしまった。
「笠井、何で泣いてるの?俺、なんか悪いこと言った?」
「言ったよぉ…
齋藤が私のこと、す、好きとか言うから。
私だってずっと齋藤のこと見てて、齋藤は綺麗だからさ、
私なんか性欲が強いなんて、男みたいで絶対嫌だろうなとか思ってたから、だから」
・・・笠井が泣いてるのを見るなんて初めてだ。
いつも感情が見えない笠井が、俺のことで顔を真っ赤にして泣いている。
感情が読み取れないのは…照れ屋の裏返しか…?
…あぁもう。
可愛すぎる。
俺はたまらなくなって笠井を抱きしめた。