白日夢(はくじつむ)・一 第一章:みいちゃん-1
第一章 : みいちゃん
(一)生業(なりわい)
カラリと晴れ渡った空に惹かれて、
俺は久しぶりに外に出た。
太陽の光を浴びるのは、
何週間ぶりのことだろうか。
窓の無い穴蔵のようなマンションの一室で、
日がな一日パソコンに向かい黙々とキーボードを叩く毎日を送っている。
集中心に欠ける俺は、
ちょっとした物音や光の影にすぐに反応してしまい、
執筆を止めてしまう。
その為に部屋の灯りを落とし、
キーボードの上に柔らかい光を当てている。
動く物は俺の影だけであり、
物音はキーボードを叩く音だけが響いている。
勿論、
話をする相手などだれ一人居ない。
時折、
”
この世に生存しているのは、
俺だけではないのか!
”と、
考えてしまうこともある。
不安にかられることも、
しばしばだ。
「ピロロ、ピロロ。」
携帯が鳴った。
あぁ、メールだ。
誰からだ?
ふん、編集の田坂に決まっている。
あの男以外の誰が、俺にメールをくれるというのだ。
せいぜいが、出会い系サイトからだ。
「原稿は?打ち合わせ有り、よろしく。」
打ち合わせだと!
俺をだしにして、あの店に行きたいだけだろうが。
打ち合わせと言っても、
「最近刺激が弱いですねぇ。マンネリ化してませんかぁ?もっとこう、間が膨らむような内容にしてくださいょ。」等と、人の苦労も知らず勝手なことばかりを言う。
「どうすりゃ良いんだ!」と言い返しても、
「それは、先生の感性にお任せしますょ。何と言っても、先生はプロなんだから。」と、こちらにボールを投げ返すだけだ。
冗談じゃない!
確かに、エロ小説を生業とはしている。
しかし、そうそう面白いストーリーが浮かぶ筈もない。
出会い系サイトに登録をしてはみたものの、なかなかにうまくいかない。
兵の話を聞きはするが、ホントのことなのか?
どうしたって疑ってしまう。
まだ街をぶらついている折りの方が、チャンスがある。
*兵=つわもの