白日夢(はくじつむ)・一 第一章:みいちゃん-4
(三) ホテルで
部屋に入るなり娘は、
「お腹空いちゃったァ。ピザ、頼んでいいかなァ?」
と、電話機を取り上げた。
俺の返事を待たずに、勝手に注文している。
有無を言わせぬ言動だ。
苦笑いをする俺に対し、娘は言い放った。
「大丈夫だョゥ、おじさん。ちゃんとお返しは、するからさァ。クク・・。」
「そりゃあ、楽しみだ。どんな事をしてくれるのかな?わくわくするなぁ。」
娘のあっけらかんとした態度に合わせ、俺も軽く言葉を返した。
俺がジャケットを脱ぎ始めると、娘はガラス張りの浴室に飛び込んだ。
「先にシャワーでも、浴びるゥ?」
浴槽にお湯を出しながら、♪ふんふんふん♪と歌い始めた。
今時の歌に疎い俺には、さっぱりわからない。
英語交じりの歌詞で、発音もはっきりとしない。
唯、リズム感のあることだけはわかった。
”それにしても慣れたものだ”
と感心していると、浴室から出てきた娘が真顔で俺に言った。
「ミィちゃんねぇ、初めてなんだョ。カレシとは何回かあるけど、知らない人とは初めてなんだョ。」
”嘘を付け!信じられるか、そんな事。”
そんな言葉が俺の顔に書いてでもあるのか、娘は言葉を続けた。
「ウソじゃないョォ、ホントだョォ。今夜は、トクベツなのォ。カレシと喧嘩してサァ、アパートに帰るのもシャクだからァ。」
言葉の抑揚が妙ちきりんで、しかも語尾を伸ばす話し方が俺には耳障りなのだが、この娘に関しては嫌ではなかった。
むしろ心地よく聞こえてしまう。
甘えられている、という感覚があるのだ。
*抑揚=よくよう
「そうかぁ、彼氏と喧嘩したんだ。」
ベッドの端に座りながら、俺は娘の全身の品定めを始めた。
背が低いことは解っていたが、顔が小さい故か実寸よりは高く感じる。
体型は痩せ型で、指の細さに驚かされた。
手の平部が小さく、指が長い。
ダブダブのトレーナーでは、上半身の体型がわからない。
腕を組んで歩いていた折りの、質感たっぷりの乳房がまだ腕に感触として残っている。