白日夢(はくじつむ)・一 第一章:みいちゃん-3
俺は、毅然として言い放った。
「正真正銘、キムラタクヤだ。」
「クククッ、まっいいか。
ねぇ、ミィちゃんねぇ。
今お金が無いのォ。
今夜泊まる所がないのォゥ。」
と、力無い声で呟いた。
「そうかぁ、お金が無いんだ。困ったなぁ、おじさんも持ってないょ。マンションにならあるがなぁ。」
ゲーム感覚で、俺は答えた。
すれ違う者の、羨望の眼差しやら侮蔑の視線を感じつつも、悪い気はしなかった。
むしろ、誇らしく思えていた。
数多歩いていた男の中から、この俺を選んでくれたのだ。
「お金はいらないィ。泊まるところを探してるのォ。じゃあさぁ、マンションに泊めてょ、ネッ。」
俺の腕を左右に揺すりながら、その娘は父親におねだりをするようにしてきた。
*侮蔑=ぶべつ : 数多=あまた
”マンションは不味いぞ。後々、面倒になるかもしれん。”
半ば、疑いの気持ちを抱いた。
まさかとは思うが、美人局ということもある、と考えた。
「ちょっと、待てょ。昨日、臨時収入があったなぁ。このポケットに入れたっけ・・。」
娘の腕が絡む左腕を動かし、ジャケットの内ポケットを探すふりをした。
*美人局=つつもたせ
実の所は反対側のポケットに入れてあるのだが、乳房の感触をより楽しむ為に、わざとしたのだ。
もぞもぞと探すふりをしながら、ぐりぐりと肘を押し付けた。
実に弾力がある。まるで、ゴムまりのようだ。
「あぁ、あったゾ・・」
俺が言い終わらぬ内に、
「やったあぁ。じゃあさァ、ラブホに入ろう、そうしょうゥ。」
と、嬌声を上げた。
思いも寄らぬ展開に戸惑いつつも、俺は娘に主導権を握られたままだった。