白日夢(はくじつむ)・一 第一章:みいちゃん-2
(二) 信号待ち
一月程前だったか、
気分転換の為にと出かけた時だった。
新宿御苑辺りだったか、
信号待ちをしている俺の腕に、
スルリと腕が滑り込んできた。
”誰だ?!”
と、横を見ると十代後半らしき女が立っている。
俺の視線に気が付いている筈なのに、前を見据えたままだ。
”振り払おうか”
と思ったものの、上腕部に当たる乳房の感触が心地良い。
最近の若い娘の発育ぶりには、全く驚かされる。
「信号、青だョォ。渡らないのォ?」
馴れ馴れしい声で、やっと俺を見た。
一瞬、ギョッとした。
まるでパンダだ。
そうか、最近出没している山姥ギャルだ。
「渡ろうょォ、早くゥ。」
と、両手で俺の腕を引っ張り始めた。
「あぁっ?わかった、わかった。」
*山姥=やまんば
俺は取りあえず、歩き始めた。
山姥ギャルは前にも増して、俺の腕にしがみついてくる。
年甲斐もなく、股間が膨らんできた。
”こんな、ガキに!”
と、己を窘(たしな)めた。
とは言うものの、興味が湧いたのも事実だった。
そろそろ四十の声を聞く俺だ。
こんな経験は、滅多に無いことだ。
*窘めた=たしなめた
「誰だっけ?」
”ひょっとして知人の娘か?”
と思い、恐る恐る聞いてみた。
「ミィちゃんだょ。おじさんはァ?」
屈託のない返事が、返ってきた。
どうやら初対面のようだ。
”暇つぶしになるか”
と考えた俺は、
「キムタク。」
と、短く答えた。
「えぇっ?」
娘は足を止めて、俺の顔をのぞき込んできた。
「嘘だぁ!ぜんぜん違うじゃん。」
明らかに不満そうな声だった。