『異常気象』-1
──あ、雨………。
それも、結構激しい。
「なんでー?もう……っ。」
思わず一人呟く。
オフィスから、出られなくなってしまった。
昨日の予報ではこの辺りは降らないって言ってたのに。
最近、どうも変だと思う。おかげで立ち往生。
そんなあたしを尻目に、次から次へと会社を出て行く人達。
なんでみんな傘持ってんのよ…。
お腹空いたし、せっかく今日は金曜日だというのに最近の天候不順のせいで!
…ただでさえイライラしてるっていうのに。
「え〜??やだぁ、どーしてですかー、もうっ。」
後ろからは、なんかキャピキャピしたのが来るし。
いちゃつくのは会社出てからにしなさいよ。
いつまでも学生気分でいられちゃ困る。
「どーしてって言われてもな…。」
って、この男の声は……
恐る恐る振り返ったあたしの目に映ったのは
…やっぱり。
よりによってあいつ…。
紛れもない、あたしのイライラの元凶。
2週間前に別れた男。
課は違うからこの2週間顔見ないで済んでたのに。
こっちは一人で、向こうはもう女連れ?
これ程惨めなものってない。
…さぁどうしよう。
外はどしゃ降り。傘は無し。
後ろからは、別れた男が女を連れて近付いて来る。
このまま一人自動ドアの内側で、段々激しくなる雨を見ていなきゃいけないのか…。
悔しくて情けなくて、何だか悲しくなってきて。
現実から逃げるように、帰ったら何しよう、なんて考えようとしてみたり。
「うっわ、すごい雨ですねぇ!」
「…傘、持ってたよね?」
「はい、確か置き傘が…。」
「じゃあ、ここで。」
「え?………あ、…じゃあ、お先失礼します…。」
背後でされていた会話を、朧気に聞いていた。
とりあえず今日は帰ったら録っといたドラマ見て……そうだ、日曜日に美容院行こう。
もう、髪を思い切り短くするか、それかパーマでも…。それから……