祭囃子の夜-2
祭りの会場は、祖母の家から十五分ぐらい歩いた大きな神社だ。
神社に入る前からところ狭しと並ぶ多種多様な屋台、行き交う老若男女を問わない人々。考えてみれば、この夏祭りに来るのは初めてである。
進むにつれて大きくなる太鼓や笛の音、押し流されてしまいそうな人波、そして飛び交う活気。これぞ祭り、ビバ日本の夏祭り。
「ほら、手でも繋いでないと直ぐにはぐれちゃうぞ」
忙しなく屋台を覗き込もうとする私を見て、彼氏が子供をあやすように笑う。ちょっと恥ずかしかったものの、差し出された手を握り締める。
私の手も、彼氏の手も、少し汗ばんでいた。緊張は隠せない。
それからしばらく、私達は何かを買い求めるわけでもなく屋台の群れを練り歩いていた。お互いの気が高ぶっている所為か、言葉少なく次の行動に移れない。
彼氏の手が、私の手を痛いほど、それでも優しく握り締める。まるで琴座の神話、死者の国から出ようとする際、オルペウスが連れ出すエウリュディケーの存在を確認するように。だから、私は、
(ここにいるよ。ちゃんと)
心の中で呟きながら、手を握り返す。
けれど、神話のように振り向いても冥界に連れ戻されることはない。だから、振り向いて、いつもの笑顔を見せて欲しい。
すると、その願いが伝わったのか、彼はゆっくりと立ち止まる。
「ねぇ、これからどうする?」
緊張に上擦った声で問いかけてくる。
「え、えっと……私――」
「――大きいね」
どこからか、祭囃子の喧騒が聞こえてくる。それをかき消すかのように、人々のざわめきが大きくなる。
私達も、その喧騒の中に居た。
周囲の人々は私達のことを景色の一環ぐらいにしか見ていない。僅かの人が、私達の行為を興奮の眼差しで見つめる。けれども、私達は気にせず行為を続けた。
「こんなの、入るのかな……?」
私の手の中で猛る棒。黒褐色に染まる先端が、フルフルと愛らしく震える。触れれば、冷たいようで熱くさえ感じる棒をマジマジと見つめてみた。
そして私は、ゆっくりと棒に舌を這わせてじっくりと味わう。舌を駆ける痺れるような苦味。甘くも感じられる白身を帯びた根元。
丹念に舐め回し、口内へと徐々に入れてゆく。
「あ、ふ。ぅん……ッ」
棒の大きさに狼狽しつつも、喉を突きかけて軽く呻き声を上げる。
立っていても頭一つ分大きな彼は、私を見下ろすような形で眼差しを向けてくる。
「焦らなくても良いよ。まだ時間はたっぷりあるんだから」
囁くようにして、棒を下げようとする。
でも私は、不慣れで不器用ながら、食い下がって棒を吸い込むように前後させる。
「あっ……」
瞬間、彼氏の顔が苦悶に歪む。
棒から迸るものを飲み込み切れず、白く粘度の高い液が口内から零れる。甘みと苦味が交じり合った液体が口内を満たし、ツーッと顎から首筋へ流れた。
「ぷはっ……はぁ、はぁ。美味しい」
無理はしてないよ、と心配げな彼に微笑んで見せた。
「今度は、私の番だね」
そう言って、私は浴衣の裾をたくし上げ、邪魔にならない程度の袖を捲くる。私は浴衣を汚さないように中腰で壁に掴まり、彼は少し腰を下ろした格好。
彼は緊張した面持ちで、手にした棒をゆっくりとピンク色の秘所に近づける。触れようとすれば、彼の思惑に反して身を捩じらせる。秘所から顔を出す膨らみが、敏感に反応するのだ。
「もう、こんなに濡れてる……」
棒に纏わり付く液体に、恥ずかしくなるような感想を彼氏が言った。
今度は逃げられないように、ギリギリまで秘所にギリギリまで棒を近づけて、一気に突き入れた。
『ッ……』
同時に二人の顔が戸惑いを浮かべる。
思ったより痛みというものはないが、最初の膜が破れたことに僅かな恥辱があった。数瞬の戸惑いの後、彼氏が少し腰を引く。
「もう一回……」
必要のない彼氏の懇願。私は肯き、先を促す。
彼氏は再び突き入れる棒の狙いを定め、素早く動かした。