好奇心より強く-1
「ただいま〜」
誰もいないと分かっていても、つい言ってしまう。
私、笠井ゆりは都内の高校に通う二年生。両親は共に夜遅くまで働いていて、帰って来ない事も珍しくない。
小学校の頃からこの状態だけれど、人並みに愛されてきたと思うし、与えても貰ったと思う。特にぐれることもなく、ごく普通に平凡に育った。
ある一点を除いては。
部屋に入り、電気はつけずにカーテンを閉める。
自然とベッドに入り、布団を腰までかける。
手はゆっくりと下に向かう。
「んっ……はぁ…」
湿った下着の上から割れ目をなぞった。
…ある一点とは、「性」に対する好奇心が強いことだった。でも――――――
「うぅん」
少しうなって起き上がった。いつも…何かが見えそうで見えない。
(確かに気持ち良いけど、三大欲って程かなぁ…?)
イくっていうのも体験したことはなかった。
特に何かがあるわけじゃないけどこの行為を続けてしまうのは、やっぱり、一度本気で気持ち良いって感じたいって思ってるから。
(でもこんなんじゃ無理っぽい…)
***
次の日。
「おはよ。眠そうだな」
齋藤の声ではっきりと目が覚める。まずい。寝ぼけながら歩いてた。
「眠いよぉ。齋藤は朝からさわやかだね」
「そうでもないよー」
齋藤は少し笑った。
同じクラスの齋藤崇は特別かっこいいってわけじゃないけど、頭が良くて優しくて運動神経も悪くない。
背が高い分少し線が細いけど、そこが良いと女子の間ではさりげなく人気があった。
私はといえば、恋とか良くわかんないし、変にさわやか過ぎて欲のなさそうな齋藤は、まるで仏様みたいだなぁと思うだけだった。
(このひとも性欲とかあるのかなぁ。好青年過ぎる)
「なに、どうしたの?」
「あ、いや、なんでもないよ」
ヨコシマな想像をしてしまい、少し顔が熱くなる。