涙目テディベア-7
「ねぇ、吾妻……あんたこういうの得意なの?」
「え?……まぁ、めちゃくちゃ上手いってワケじゃないけど。それなりには回数やってるからな」
「そう……それじゃあ」
水澄はビシッと俺を指差して、
「私にボタンを離すタイミングを指示しなさい!」
「……指示?」
そんな命令を下した。
「そしたら、ちゃんと私があの子を助けてあげられるでしょ?なんて名案!」
「なるほど、そういう方法もアリ……か」
ま、実際は俺自身もそんなに上手くはないのだが……水澄が単独でやるよりは多少は確率が上がるかもだ。
アームの滑りは、何度も見たからだいたい分かった。
それでも最終的には運次第なんだけども。水澄が指示を出してから指を離す時間にもよるし。
「よーし、やるわよ!」
「オッケ。で、狙いは……あの薄緑色のやつか」
「それよ!さぁ、いつでも来なさい!」
言いつつ早速ボタンを押し始める水澄。
――馬鹿、もうちょっと考えさせろっての!
クレーンは流れ……
「――今!」
「よっ」
……止まった。
うん、指示してすぐに離してくれた。それについては大丈夫そうだ。
俺の狙いはクマについているキーチェーン。
大きく広がっているので、上手くやればなんとかアームを通せそうな感じだ。
「次は縦ね!」
これが問題だ。
この機体、両隣を別のゲームに挟まれているために横から覗く事ができない。
カンでいくしかなさそうだ。
水澄がボタンを押す。
クレーンが流れる。
「―――今!」
「ほっ」
クレーンが開き、下りる。
その左側のアームが狙いのチェーンの間を……………………通った!
「よし!」
「そのまま、そのまま!」
意気込む二人に後押しされるようにクレーンは持ち上がり――――
「取れた!……あれ?」
「ありゃ?」
持ち上がったクレーンの先には、薄緑色のテディベアと……茶色のテディベアがぶら下がっていた。
どうやら、偶然反対側のアームに上手く引っ掛かっていたらしい。
「……なんて幸運な」
「きっとあの子も助けてほしかったのね!」
取り出し口に落ちた二匹のテディベアを、水澄が嬉しそうに取り出した。