細糸のような愛よりも-7
「綿貫」
「良くしてやるよ」
言って綿貫はその長い舌で自分の手のひらをべろりと舐めた。
骨張った長い指をゆっくりと舐める姿は淫靡だ。
唾液塗れのその手のひらで、綿貫は俺のものを握る。
「あうッ」
大きな手のひらが俺のものを包む。
そしてゆっくりと扱き出す。
「う……あッ」
「足りないか？」
言うなり、綿貫が舌を雁首に絡ませてきた。
絡ませ舐めながらも、手の動きは止めない。
俺は圧倒的なその快楽に飲まれて行った。
「くッ、あ……おいッ、止め…ッ！」
男に咥えられ、喘がされて。
屈辱な筈なのに、快感がそれを勝る。
普段咥えられる立場であるなら、自分を咥える相手に抱くのは征服感なのだが、今は言いえぬ屈服感を感じていた。
しかし、それさえもが快感だった。
「止めていいのか？」
意地悪く綿貫は笑う。
「こんな状態で俺がシコんの止めたら、きっとつらいぜ」
言って、手を離す。
笑いを含んだ囁くような言葉が、俺の耳朶に響く。
「俺が此処からいなくなったら、お前はオナんのかな？ 誰を想像してオナるんだ？ え？」
屈辱感に――涙が溢れた。
綿貫の言葉通りだ。
きっとこのままこいつが此処から去ったら、俺は猛ったままのものを鎮めるべく、きっと自慰に耽ることだろう。
……誰を想像して？
それは――
「賭けてもいい」
俺の涙を指で拭いながら、綿貫は言った。
そして耳元に唇を寄せ、ぞくりとするほど甘く低い声で囁いた。
「お前、俺を想像してるよ」
「んうッ」
そして、再び俺のものを掴むと、濡れたままの手でくちゃくちゃと音を立てながら扱き出す。
肌蹴た胸元を指でなぞり、まるで女の子にするように胸の突起を弄る。
そこを摘まれれば痛いようなむず痒いような感覚が俺の背を駆け抜けた。
「はあッ…はあッ…おいッ」
俺は荒い息を吐きながら、綿貫を呼んだ。
何だ、と短く返し、奴は胸の突起を尖らせた舌先で突いていた。
多分、こいつは気付いているんだ。
「おい……ってば……！」
「だから何だって聞いてるんだよ」
見上げた綿貫の目が笑っていた。
やっぱり――気付いてやがるんだ。
俺の絶頂が近いことを。
そして、こいつはわざと俺をイカせないようにしている。
「勘弁してくれ……も……いい加減……ッ」
「イキたいんなら、言えばいいじゃねえか」
綿貫はそう言って俺の先走りと奴との唾液に塗れた手を亀頭に絡ませた。
耳障りな水音が耳までをも犯す。
「イカせて下さいってな。出来んだろ、それくらい」
「て……め……」
「そうだな……プラスアルファ。いやらしくお願いするなら、相応の見返りはしてやるよ」
喉の奥で笑う綿貫の瞳に、俺は嗜虐性を見た。
誰が言うか。
心では思っていても、身体はそうしちゃくれない。
言いようのない身体の疼きに、俺の口は開いていた。
「イカ……せてくれ」
「おいおいおい。何聞いてたんだよ、絹川」
ようやっと絞り出した俺の言葉に、綿貫は感情のない声でそう言うと俺の頭を引っ掴んだ。
「プラスアルファ、聞こえなかったか？」
「いやらしくお願いなんか、できるか……あうッ！」
綿貫が亀頭を再び弄った。
裏筋を指の腹で擦りながら、溝のところを優しく撫でる。