細糸のような愛よりも-15
俺だって誰かを愛し、愛されたいと思っていた。
でも、もう無理なんだ。
俺が欲しいのは愛じゃなくて、極上の快楽。
今はもう、愛なんて俺を締めつけるだけでしかない。
悪い、と俺は俯いたままで言った。
「ごめん、毛利……」
「――『赤い糸』は、嘘だったね」
そう一言だけ残し、毛利は扉を閉めた。
廊下を歩き、階段を下りる音が微かに聞こえる。
やがて足音が聞こえなくなると、俺はベッドに大の字に身を投げた。
虚ろな感覚。しかし、不思議と吹っ切れたような気持ちだった。
運命の赤い糸なんていうけれど、その糸に身体を縛られるのはまっぴらだ。
身体に食い込ませて人を苦しめるくせに、その細糸はどうせやがてはぷっつりと切れてしまう。
そんな愛なら、俺はいらない。
「………」
俺は無言で携帯を開いた。
三回のコールの後で、耳慣れた低い声が耳朶に響く。
俺は、人懐こくそれでいてどこか冷たい声で笑う男に言った。
「俺はもっと――快楽が欲しいんだ」