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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stormcloud-36

「澱みどもよ!思う存分民の生気を食らって、来る青嵐会の兵を根絶やしにするがいい!」

「な―!?」

そこに現れたのは香雲であった。自らの治める龍の都を睥睨すべく、開けられた風穴からは傲慢な表情が見えた。そしてその向こうに春雲の姿が。

「あいつ…っ!」

「神立!まて!」

神立は、颱が静止するのも聞かずに、持ち前の跳躍力とで一気にそこまで駆け上がった。風も、音も、光も目に入ってはいなかった。ただ、目的地と、距離と、時間があるだけ。上りきって神立は、組みしだかれ、着物のはだけた春雲の姿を見た

「神立!」

香雲は振り向いた。

「春雲に…触るな!」

「ほお。お前か、春雲に下らぬ戯言を吹き込んだのは」

神立を見て、香雲は細い優雅な眉を上げた。

「春雲を離せ!」

「下がれ下郎。お前のような汚らわしい出来損ないが気安く名を呼べる名ではないのだ。待って居ろ。じきに寒雲が来てお前を引き裂き、残骸をこいつの目の前に並べてくれよう」

寒雲の弁舌の手ほどきをしたのはこいつだな、と神立は思った。最初に寒雲の部屋の外で盗み聞きしていた時に聞こえたのはあの演説の練習だったのだ。神立は笑い出した。

「何がおかしい!」

「澱みにそそのかされて、仲間を裏切る、か…出来損ないってのは確かに当たってるよ、香雲…!」

「何ィ…?」

優雅な顔が怒りに歪んだ。最早、最初に見かけたときの人のよさそうな彼の面影は何処にも無い。

「寒雲はもう捉えた!助けに来てくれるやつはもう居ない!」

そのことは計算済みだったのか、彼はさらりと笑って受け流した。

「愚か者が。はじめから当てになどしておらぬわ!あの澱みの群れが見えぬのか?」

見えていた。しかも、さっきより更に数が増え、町はほとんどあの黒い影に多い尽くされようとしていた。

「私に逆らうものは皆あの澱みどもの餌食にしてくれる!」

「兄上!一体…どうしてしまったというのです!あなたは純粋に、龍の将来を案じていたのではないのですか!」

豹変した哥に着物の襟をつかまれたまま、春雲はすがるように言った。


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