最後の1枚-1
パシャッ
ーシャッターを押すその音でさえ、聞こえない
私にはレンズの向こうの世界しか見えないー
小さい頃から写真をとるのが好きだった。
山をとり、夕日をとり、人をとり・・・あたしが行き着いたのは【戦場】だった。
テレビやラジオでは伝えきれない戦争の悲惨さと、そこに生きる人たちの強さをみんなに知らせたかった。
もっと
もっと
もっと・・・!
いくら写真をとっても、平和な世界に住む人にこの現実は伝わらない。
あたしの写真で世界が変わるなんて思ってない。
でもたった1人でも、誰かの心を動かすような写真がとりたい!
ある日、いつものように写真を撮っていると、暴動が起こった。
それを抑えようと兵士が辺りかまわず人々に発砲していく。
私はカメラを構えた。
レンズ越しに兵士と目が合う
相手は銃を構える
ピントを絞る
私は最後まで兵士から目を反らさなかった
ズキュンっ
1ヶ月後、世界では戦争反対運動が最高潮に達していた。
デモ行進をする人々の手には1枚の写真。
そして行進の先頭を歩く人の首には、レンズを打ち抜かれたカメラがかけられていた。