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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stargazers-19

「私、事故が起きた場所に行った。何回も……ジェットスキーで…。それであの日…急に天気が悪くなって…嵐が来て、あたし…」

そして、カジマヤがそこにいることにはじめて気がついたように、まじまじと彼を見た。

「…あたし…」

そして、彼女の目の焦点が完全に合った。乱雑な部屋の中で探し物を見つけたときのように、彼女の目はしっかりとカジマヤを見ていた。

「あたし、貴方のことを見たわ」

そして、今度はカジマヤを逃がすまいとするかのように両手で彼の腕をつかんだ。

「最初は見間違いかと思った。でも、今ならわかる…貴方はあそこで何をしてたの?あの戦闘機の残骸を…どうして…どうしてあんな目で睨みつけてたの?!」

カジマヤには、答えることが出来なかった。アリスは、今まで一生懸命完成させようと思っていたパズルの図柄が、実は目を背けたくなるようなおぞましい物だった時に味わうような感覚に襲われた。悪いものを見ることになるのはわかりきっているのに、組み立てるのを止められない。

「あいつは…俺の…」

カジマヤは口を閉じた。友人の名をここで出して…それでどうなる?更なる苦しみを彼女に与えるだけなのではないか?

命を奪われた憎しみに駆られて、彼は一人の男の命を奪ったか、今にも奪おうとしている。そして、その娘が今目の前にいて…肉親を奪われた憎しみを、刃のように両手に握り締めている。自分の父親が、カジマヤの友人の命を奪ったことを知ったら、彼女はその刃をどこへ向けるのだろう?

今、カジマヤの心には後悔に似た恐怖が満ちていた。彼が奪った命は、彼が大切にしたいと思う人間の父親の命だったのだ。

これと同じような感覚を、彼女に味合わせるくらいならば…

「俺が、アイツの戦闘機を、やった」

ぎこちなく、古いぜんまい仕掛けの玩具のように、カジマヤは口にした。



アリスは駆け出した。泣いていたことは間違いない。その声がずっと、片時も離れることなく彼の耳に残ることになったのだから。

「あんたなんか、大っ嫌い!!」



++++++++++++++



「カジマヤ」

明かりの消えた家を背に、兄が立っている。呼び止められて、カジマヤは水の中にいるみたいにゆっくりとした動きで振り向いた。

「なんだよ、兄貴?」

兄は純粋に弟を心配していた。始終こんな感じなのだ。水の中にいるみたいな、油を差すのを忘れたぜんまい仕掛けの玩具のような。

「どうした?」

“何があった”とは聞いても無駄だと彼にはわかっていたし、カジマヤの様子を見れば何と無く想像はついた。いまやカジマヤの目は落ち窪み、頬もこけ始めていた。食欲がなくなったわけではない。むしろ以前より良く食べるようになった。まるで、食べることが義務であるかのような機械的な食事風景ではあるが。


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