lesson9-2
〈２〉
俺が社会人になって、俺と春香の関係はガラッと変わった。
今までは家庭教師として週二回、正々堂々と春香の家に行き、勉強を教えるという役目は負っていたが、春香と二人でいられる時間は確実に確保されてきた。忙しい両親は平日は殆ど家にいなかったから、春香の家は時として愛の巣にもなった。
今はどうだろう。家庭教師としての契約は切れ、春香の家に上がることは無くなった。あったとしてもそれは両親がいない時だけ。さすがに土日はどちらかが家にいることが多いし、かと言って社宅に春香を招き入れるわけにもいかない。誰かに見られた時に、「恋人です」と紹介するにはさすがに若すぎる。
更に言えば、、仕事が忙しく、平日に会うのも難しくなった。これらの理由から、週末ちょっと遠くに遊びに行く、ということが増えた。
そんなわけで、今年度に入って、春香に会えるのは次がやっと四回目だ。もちろん、短い時間でも二人でいられればそれで幸せだな、と思うけどもっと触れ合いたいな、とも思う。社会人になってから、春香と交わったのはたまたま親がいなかった一回だけだ。
友達から恋人になるといろいろ難しい、という話をよく聞くが、家庭教師から恋人になるというのもいろいろ難しい。