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Life
【初恋 恋愛小説】

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Life-3

「懐かしーな。小学校ん時よく一緒に歩いたよな」
…そういえば。馬鹿みたいに仲良しだったっけ。
「いつからだっけか、一緒に歩かなくなったの」
「中学入ってから」
そっか、と奴。
「勿体ないことしたな…」
「え?」
「いや、こっちの話」
常盤は慌てて首を振る。何が勿体ないんだろ?考える私に常盤が言った。
「昔みたいにさ、『宇祢』って呼んでもいいか」
私はポカンと常盤を見つめる。
「ど、どしたの、常盤…」
「『常盤』じゃないだろ」
変だ。おかしい。こいつはホントに常盤朔真?先に名前で呼ばなくなったのはそっちじゃないか。
「『常盤』じゃなくて?」
私は一呼吸おいて言う。
「朔ちゃん」
うわ、懐かしい。ってゆーか恥ずかしい!
もう私はそんな柄じゃない。
あの人が死んでしまってから、私は変わってしまったから…
「よろしい」
「よろしくないよ」
溜息をつく私。
「"ちゃん"なんて…私いくつだと思ってるの。高2だよ?」
「じゃあ朔真(さくま)でいい」
でいい、って…ねぇ?常盤じゃ駄目な訳?
もう一度溜息をつく。
奴が頑固なことは知っている。何たって腐れ縁だ。
「分かったよ」
折れるのはいつも私。

学校に着く。時間が早くて助かった。もう少し遅かったら女子一同の質問責めにあっただろう、「なんで一緒に登校してるの!?」って。
私は席に座る。窓際の一番後ろ。外を眺めた。ちらほら生徒が門をくぐって来るのが見える。
みんな同じ服、同じ目的でやってくる。人間なんてそんなもの。

「おはよーさんっ」
元気のいい挨拶。
「おはよ、仄(ほのか)」
とき…おっと違った、朔真が声をかける。そう、私と朔真は同じクラスだ。そして…
「おはよう、松浪」
彼も。仄と呼ばれた奴が私に笑いかける。相変わらず無邪気な笑みだわ。
「おはよう、谷崎」
谷崎仄。これが奴の正式名称。
「今朝はなんや寒いなぁ」
どかっと私の隣の席に腰を下ろす。彼は私の隣の席だ。なんて偶然。
「風邪ひいてまうでー」
「谷崎は心配ないでしょ」
私は机に頬杖をついて笑った。
「馬鹿って風邪ひかないから」
お、言うなコイツという顔をする谷崎。そしてニヤリと笑って言った。
「残念、馬鹿は風邪ひかんのやない、ひいとることに気付かんのや」
むむっ、一理ある。
「さっすが哲学者」
「やろ?」
ふははと笑う私達。そのとき私は気付かなかった、朔真が複雑な顔で私を見ていたことに。

長い学校での一日が終わる。私はほっとして学校を出た。今日はすぐ家路についたので、まだ明るい。
北風が吹き抜けた。瞬間的に思い出す温かな手。冬になるといつも繋いだ。もう二度と繋げない…


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