光の風 〈回想篇〉前編-7
「さすがにそこまで非情じゃない!」
焦りながら自分のフォローをし始めた。それでも何か空気が違う。カルサは違和感を覚えていた。
「確かに関わろうとはしなかったが、それは日向の為を思っての事だ!」
「日向の?」
貴未の疑問がすぐさま入る。
「当たり前だ!あいつは…って、え?」
カルサは思わず言葉を止めた。周りを見ても、全員がきょとんとした顔でカルサを見ている。
「なんか違和感があるな。とにかく、日向はテスタの所に送った。一先ずは安心だ。」
「テスタの所…なるほどね。」
マチェリラが感心の声を上げる。千羅も瑛琳もそれに頷いた。しかし貴未は疑問符を並べている。
「テスタ?誰?」
周りをきょろきょろしながら、誰かに答えを求めた。それを千羅が受けとめる。
「界の扉の番人だ。古の民と聞いていますが。」
後半の言葉はカルサに投げたものだった。カルサは頷き応える。
「あいつは時空の狭間にいる。太古から今まで生きているが、テスタにとってオレ達の一生は一時間位なのかもな。」
「一時間!?」
「彼はそれ程に時間というものに縛られないの。あらゆる世界に通じ、その過去も現在も把握している。」
マチェリラが言葉を添える。貴未が小さく呟いた。
「全て。」
マチェリラは小さく頷き、告げる。
「彼は時折、未来さえも垣間見る。」
誰もがマチェリラの言葉に圧倒された。貴未は衝撃の新人物に押されている。
「あいつの事だ、太古の事件は先に知っていただろう。」
カルサが特に何かを含む訳でもなく、吐き捨てた。
「でも未来は変えられるものじゃない。」
マチェリラが呟く。誰もが黙り込んでしまった。やりきれない思いが彼らから言葉を奪う。
「そんな凄い人の所に日向を預けたのか?」
貴未から疑問が飛ぶ。
「全空間、全世界の中で安全な所は無い。唯一がテスタの傍だった。オレ達は日向を失う訳にはいかない。」
何とも言えない淋しい空気がカルサを纏う。
「お前はいつも、辛そうだな。」
貴未の言葉にカルサは首を横に振った。千羅も瑛琳も、俯き加減に目を伏せる。
「本当に辛いのは日向だ。」
カルサの言葉に再び誰もが疑問符を並べた。何故だろう、日向の話をする時のカルサには違和感がある。まるで特別なものに触れるかのようだった。