ルウとリル-5
「リウ、早く洗えよ」
ルウに急かされてシャンプーをする。彼と違いわたしの髪は長いため時間がかかる。
先に湯船に沈むルウの後に続いて、素早く髪と体を洗ってからわたしも沈む。
二人で向かい合ってじっとしていると、ルウは無言でわたしの頭を撫でて、そっと抱きしめてくれた。
この瞬間にいつも涙が出る。勝手にそれは流れて頬を伝うのだ。
最初の頃は身体も震えていたけれど今はもうそれはなくなった。
ルウはいつものように指でわたしの涙を拭ってくれる。
さっき男を殺したばかりの指はわたしにとても優しい。
「ねぇ、早く平和になると、いいね」
ルウの背中を見つめ呟く。
ルウは返事をしてくれない。
分かっている。
それがどういう意味なのか。
平和になったらわたし達のような暗殺者は要らなくなるという事も。
でも、こんな風に誰かを殺す毎日が続くのは、イヤなのだ。
今の時代にはわたし達のように、子供のままの姿を一生続けて、人生を人を殺すだけに捧げる人がいるのだ。
お風呂から上がって、お揃いの色違いのパジャマを着て、ルウが髪を乾かしてくれる間、わたし達は無言だった。
寝室の大きなダブルベッドに二人で潜り込み、サイドテーブルの上のリモコンで明かりを消した時にルウがぽつりと呟いた。
「例え」
ルウの方を見る。闇に慣れていない目でその顔を見分ける事は出来なかった。
「例え俺たちが死ぬ事になっても世界が平和になったら良いと思う。もう俺たちみたいな人間は創られてはいけないと思うよ。ただ、最期はリルと一緒が良い」
ルウの手がわたしの手をぎゅっと握り締めた。