「願い」-1
ここは北海道のとある牧場。
オホーツク海より、10Km程内陸に有り、
80ヘクタールの広大な牧場だ。
仲間二人がこの牧場を訪れ、行方不明となった。
彼等は何処へ…
「いつか北海道の大自然で牛みたいにノンビリと暮らしたい」
「俺は鳥になって北海道の大自然を飛び回りたい」
二人がよく口にしていた言葉だ。
一人の仲間は首を左に傾けるクセがあった。
その牧場には、若い女性も働いていた。
俺はその女性に惚れてしまった。
彼女がこんな話をした。
ここのバターを食べると願い事が叶うのよ…
彼女は独身だった。
牧場主に、今夜はこちらに泊まって行って下さいと
言われて、俺は泊まる事にした。
翌日も、彼女と朝から晩まで語り明かした。
今夜も、もし宜しければ…
俺は長期休暇を取っての旅行中だったので
その言葉に甘えて、今夜もこの牧場へ泊まる事にした。
その夜。
彼女はニコっと笑い、バターを持って来た。
あなたの妻になりたい…
トーストにバターを塗り、二人の幸せを願いながら食べた。
翌朝。
「あなた〜、朝よ〜」
彼女の声で目が覚める。
彼女は俺の妻になっていた。
朝食を作る彼女を
そっと後ろから包み込む。
「うふっ、夢が叶ったわネ〜」
満面の笑みで彼女が言った。
台所の窓からは
高原でノンビリしてる牛が見えた。
俺はふと目を細めた…
一瞬、首を左に傾けて草を食べた。
そして、青空を嬉しそうに自由に飛ぶ鳥…
まさか…
その時、行方不明になってる友達の
よく口にした言葉が天から聞こえた気がした。