君に捧げるアイシテル-2
そして彼は私の手を握り、言った。
「名前は?」
「あっ、塩田海です」
「よし。海、君は今日から俺のモノだ」
「…へっ?」
クラス中が、彼の発言で静まり返った。
「…何なんですか急に」
私が訝しげに尋ねると、先生は嬉しそうに答える。
「俺、君みたいな人をずっと探していたんだ。君こそ俺の『運命の人』だよ」
突然手を握りながらこんなことを言われ、しかも相手が謙介先生。私の胸の高まりは最高潮だった。
しかし、彼はとんでもないことを口にする。
「俺、声フェチでさ、君の声に一目惚れしたんだ。あっ、『一聞き惚れ』かな?」
とにかく、君はこれから授業の前に俺の名前を呼びに来ること。
君の『声』さえあれば1日中頑張れるからね。
私のほのかな想いが打ち砕かれた瞬間だった。
──そして現在に至り、私は彼の名前をこうして呼んでいるのだ。
「海が毎回来てくれるから、俺はこの時間が楽しみなんだ」
「ふーん。そうですか」
「そうだよ。海にはすっごく感謝してる。俺とその声を引き合わせてくれたんだから」
先生と教室まで歩いてる途中、何人かの女子とすれ違う。先生は彼女たちの声を聞いて「今のは42点」とぼやく。