僕らの日々は。〜東の海の眠れない俺ら〜-9
「ここが今いる旅館だ。スタート地点だな」
「ふんふん、それで?」
「この道を左に折れるとだな、墓場があるんだ」
「定番だな。そこに何か目印でも置いてくるのか?」
「いや、墓場は通り過ぎる」
「は?」
その言葉に安良が怪訝そうに眉を潜めた。
狭は得意げに、
「墓場なんてオーソドックス過ぎて皆つまらないだろうと思ってな、もっとイイ場所を選んでおいたぜ!」
「い、イイ場所って…?」
満月さんが不安そうに尋ねた。
……なんだろう。
激しく嫌な予感がする。
「この辺の心霊スポットやら自殺の名所やらを全部通れる特製コースだ!まぁ、二時間くらいかかるんだが……問題無い!」
「問題しか無えよ。却下だボケ狭」
「力入れすぎね……」
さすがの一葉も呆れ顔で笑っていた。
だいたいな、と安良が続ける。
「肝試しをしたところで、幽霊なんて信じてない限りはいないのと同じなんだよ」
「あぁ、『幽霊の正体見たり、彼オバマ』だっけ?」
「いや、『枯れ尾花』だからな」
「アメリカの政治家は関係ないと思うなぁ…」
▼▼
「あら?もうこんな時間…」
一葉の声に、皆時計を見る。時計は九時半を指していた。
しばらく皆でわいわい話していたら、いつの間にか時間が経っていた。
「そろそろ風呂行くか!」
よっ、と立ち上がり狭が提案する。
「この旅館温泉が湧いてて、しかも露天風呂付きらしいからな!」
「へー…。あんたにしちゃイイとこ選んだじゃない」
珍しく真白さんが嬉しそうに言う。
温泉は好きらしい。
「それじゃ、私達は着替えを取りに行きましょうか」
一葉が立ち上がる。
今回、当然ながら部屋は男女で別だ。ちなみに今いるのは、僕達の泊まる予定の男部屋である。
「んじゃ、俺達も準備したら行くかぁ」
「……安良」
「ん?何だ灯。忘れ物か?」
「分かってるとは思うけど……」
真白さんは安良をジト目で軽く睨みながら、
「覗いたりしたら、……殺すからね?」
「誰がするか。ハイリスクに対してノーリターンだろうに……」
「前言撤回。やっぱ今殺るわ」
「覗かねぇって言ってんだろうが!コラ!なぜキレる!?」
ギャーギャー騒ぐ二人。
それを見た一葉が呟く。