僕らの日々は。〜東の海の眠れない俺ら〜-7
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「うん、うまいな!」
海の家で買った焼きそばを食べた狭の感想。
お腹も減ったので、海の家で昼ご飯をとることにしたワケだ。
「アレだな!腹減ってるとなんでも美味く感じるよな!」
「とりあえずそれ、褒めてるように聞こえるけど全然褒めてないからな。要するに何でもイイって事だし」
微妙な表情でツッコむ安良。理由はというと、狭が食べてる焼きそばが安良の奢りだから。
「ふぇもよー。前ふぁら気にはっへはんだへほよー」
「うわ飛ばすな汚ぇ!食ってから喋れバカ野郎!」
「……んぐ。前から気になってたんだけどよー」
「何だよ」
「焼きそばってなんで『そば』なんだろうな?焼いてる麺、そばじゃねーじゃん」
「あ、あたしもそれ思った。何でだろうね?」
こちらは僕の奢りで焼きそばを食べてる一葉。
……ふむ、確かに何でだろう?
おそらくあの麺の蕎麦粉の使用率は0%だろうし……。
「焼きうどんは、ちゃんとうどんを焼いてるのにねぇ」
「じゃあ逆に聞くけどさ。狭は何ていう名前なら満足なのよ?」
「え?何ってそりゃ……」
狭は焼きそばの麺を眺め、
「……何だろうな?」
「いいじゃん、焼きそばで。気にしたら負けだよ」
食べ物の名前なんて、結構アバウトなものだし。
狭はなるほど、と一つ頷いた。
「つまりあれか。千葉にあるのに東京の名前を冠する某テーマパークみたいなものか」
「いや、それとはまた違う気もするけど……」
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「さってと。そんじゃま、ぼちぼち旅館に向かうか!」
「結構遊んだねぇ。疲れたぁ……」
「でもそれ以上に楽しかったわよね!」
「それには同感。日焼けしたとこが地味に痛いけど」
「昼ご飯代も浮いたし」
「灯、お前はもうちょっと奢ってくれる人の財布を思いやる気持ちを持て……」
……以上、夕方になって着替え終わった皆の感想。
誰がどれなのかは想像にお任せします。
「あら。奢ってくれるってときには、最大限に使ってあげるのが相手への礼儀でしょ?」
「そんな非道なマナーはねぇ!少しは遠慮するのが相手へのマナーだ!」
「安良。いい事を教えてあげるわ」
「……いい事?何だよ」
不審気ながらも一応聞き返す安良。
「『人』という字はね……私が安良を踏み台にして成り立っているのよ」
「俺達限定かよ!?っつーか踏み台って何だコラ!せめて寄り掛かって成り立っているとかにしろよ!」
前提として自分が下で支える事については反論無しの安良。
その時点でだいぶ力関係がはっきりしている気がするんだが。
「……で、狭。旅館にはどうやって行くのさ?」
「歩きだ。すぐ近くだよ」
「どんな所なのかしら?楽しみね!」
「温泉もあるみたいだよ。楽しみだねぇ」
「そうそう。お楽しみはまだまだこれから、だぜ」
「………?」
そう言ってニヤリと笑う狭を見て、多少の不安が生じた。
コイツ、今度は何を企んでるんだ……?