僕らの日々は。〜東の海の眠れない俺ら〜-5
「はっ、バカだな夢逢。キクラゲが海産物なワケないだろ?」
「うぅ……。じゃあ何なのか狭君は知ってるの?」
「もちろんだ!キクラゲが何なのか教えてやるよ、……安良が!」
「やっぱテメェも知らねぇだけじゃねーか!」
……高校生にもなってキクラゲが何なのか分からない人が、二名。
「何を言う、ちゃーんと知ってるぜ?アレだろ?なんかの動物の毛皮の……」
「へぇ、そうなんだぁ!」
「いや、違うから!満月さんも『なるほど!』みたいな顔で納得しないで!間違ってるから!」
っていうか毛皮って……。
『キクラ毛』。
どんな毛だよ!?
「キクラゲはキノコの仲間だよ。食感がクラゲに似てコリコリしてるから、そんな名前らしい」
「へぇ、クラゲってコリコリしてるんだ?僕あんまりクラゲって食べた事なくてさ」
「ま、だろうな。ウチでは主に酢の物にしたりするんだが……」
「なるほどな。初めて知ったぜ……」
安良の説明に狭は深く頷き、言った。
「キクラゲって……食べ物の名前だったんだな」
「「「……………」」」
発言内容、タイミング共にあんまりにもアレな感じの狭であった。
▼▼
「海だー――っ!」
「まぁ、海だな」
「確かに海だね」
「うん、海ね!」
「暑いねぇ…」
「人多いわね…」
……以上、海に着いたときの各人の反応。
どれが誰かは想像にお任せします。
「さーって、泳ぐか!」
「ダメだよ狭君、ちゃんと水着に着替えないと……ってキャー!何でもう脱いでるの!?」
「ふふふ。こんな事もあろうかと、最初から服の下に水着を着てきたからだ!」
「分かった。お前が楽しみにしてたのはよーく分かったから、脱ぐなら時と場合を考えろボケ狭」
「さ、私達は着替えてきましょ?」
真っ赤になってしまった満月さんを連れて、一葉達は更衣室へ向かった。
「さて安良、僕達も更衣室に……ってどうしたの狭?」
「ん?あぁいや、ボケ狭と『桶狭間』って似てるなと思ってさ」
「さ、行くぞ沖春」
「ちょっとくらい反応してくれても良くない!?」