僕らの日々は。〜東の海の眠れない俺ら〜-3
「ふーん……。それなら安良は一体誰の荷物を持てれば満足なのかしら」
「誰のでも拒否するわ!だいたい、俺は家で甲子園を見るつもりなんだよ」
そこは譲れないとばかりに言い切る安良に、真白さんはため息一つ。
「安良。甲子園は逃げないけど……海は早く行かないと逃げるのよ?」
「海も逃げねぇよ!どこの海に行くつもりだ!?」
「なら言い方を変えましょう。甲子園は逃げないけど……夏は逃げて行くのよ」
「ちょっとうまい事言ったのは認めるが、夏の甲子園も今しかやってねぇだろうが!」
ぎゃあぎゃあ。
そんな感じで、一日は過ぎて―――
〜☆〜☆〜☆〜
「「「結局来てんじゃん」」」
「うっせぇ!!」
翌日、待ち合わせ場所である駅前にふて腐れた顔で現れた安良に、皆でツッコんだのだった。
……ちなみに、安良は一緒に来た真白さんの荷物をしっかり持たされていた。
▼▼
「それにしても皆、よく許可が出たね?」
海水浴場へ向かう電車の中。
僕は疑問に思っていた事を皆に尋ねた。
「まぁ僕達は分かるとして……女子は同学年の男子と泊まりがけの旅行なんて、普通親が許さないと思うけど」
「そうでもなかったわよ?」
一葉は何でもないように、
「お母さんに聞いたら、『春風君が一緒なら問題無いわ。楽しんできなさい』ってさ。お父さんには適当に言っとくからって」
「……何で僕が一緒なら大丈夫なんだ?」
「さぁ?自分で考えなさい」
なんだか機嫌が良さそうな一葉と対称的に、頭に疑問符の残る僕だった。
「満月さんは?彼氏と一緒に旅行なんて、お父さんとか厳しそうじゃない?」
「んー、私はむしろ逆……かな?」
「逆?」
「うん。『夏休みだし、狭君と出かけたりしないのか?』ってお父さんからわざわざ聞いてきたくらいだし……今回も二つ返事でオーケーだったし」
「ま、夢逢の親父さんと俺も長い付き合いだからな!」
「というか、ウチの親はむしろ積極的に私と狭君をくっつけようとしているような……」
「確かにな。嫌か、夢逢?」
「えぇ!?ないない、そんな事は絶対無いよ!」
真っ赤になって全力否定。
うーん。狭、愛されてるなぁ……。
「真白さんは?」
「ウチも余裕だったよ」
「へー、最近はどこの家でもそんなに気にはしないものなのかな……」
「親に言ってないから」
「無断外泊!?」
いいのかそれ……?
「ウチの親、無駄に過保護でさ……。一泊二日だなんて言ったら、それこそ『組の若いモンをボディーガードに付かせる』なんて言い出しかねないし」
「灯の親父は色々と凄いからな……」
安良が呟く。