僕らの日々は。〜東の海の眠れない俺ら〜-11
「ああ、家からパックごとな!待ってろ、脱衣所にあるから取ってくる!」
「あ、オイ……!!」
安良の制止も聞かずに飛び出す狭。
「おいおい、どうする沖春。アイツ、マジで温泉卵作るつもりだぜ?」
「……いや、多分ほっといても大丈夫だと思う」
「何でだよ?」
「ほら。狭のやつ、旅館に着くなり部屋に自分の荷物を放り投げてただろ?」
「あん?それがどうし…」
と、狭が帰って来た。
「あ、このヤロ……あれ?手ぶらじゃねーか」
「いや、その卵なんだが…」
狭は残念そうに、
「全部割れてた……」
「…………………」
「ね?言っただろ?」
なるほど、と安良が納得したように頷く。
「っていうかね、狭。多分ここの温泉の温度だと卵は固まらないと思うよ」
「マジ!?」
「マジです。源泉で42℃程度って書いてあるし」
確か60〜70℃くらいの温度が必要なはずだ。
家にある温泉卵作り機がそれくらいだったし。
「どちらにせよ割れた卵じゃ無理か……」
「ま、そういう事。だから諦めて…」
「しかたない、温泉饅頭を作るので我慢するか。大丈夫、こんな事もあろうかと小麦粉だって家から」
「お前、もう帰れ」
▼▼
「さーて、そろそろ寝るか」
「じゃ、布団出そうか」
「枕投げは?」
「誰がやるかボケ狭」
現在時刻、12時半。
ちなみに女子はもう部屋に帰っている。
うーん、確かに一日海で遊んでいたからかなり疲れている。
僕もいい加減眠くなってきたところだ。
「んじゃ、明日は7時起床ってことで」
「ま、適当だな」
「それじゃ、おやすみ」
そう言って電気を消した。
――30分後
「……なぁ、安良」
「……なんだ、狭」
二人分の声が暗い部屋に響いた。