僕らの日々は。〜東の海の眠れない俺ら〜-10
「……平和ねぇ」
「確かに。全くもっていつも通りで安心するよ」
「で、春風はどうなの?」
「……?どう、って何がさ?」
一葉は悪戯っぽくニヤニヤ笑いながら、
「だーから。やっぱり覗いてみたい?」
「へっ?」
「それとも、安良君が言ったみたいにノーリターンだから、覗かない?」
そんな事を聞いてきた。
一葉としちゃあ、軽い気持ちで聞いてるんだろうけど……。
それって、どんな解答でも確実に僕の評価は下がる気がするんだが。
さて、何と返したもんか……。
「……ちなみにさ、一葉」
「何?」
「覗く覗かないは別としてさ、覗いた場合にはどんなリスクを背負うのかな?」
「んー、そうねぇ……」
一葉はちょっと考え、
「別に警察に通報とかはしないけど……向こう一年間の私の春風への態度が冷たくなるわね」
「オーケー。そんな大きなリスクに見合うようなリターンは存在しません。よって絶対に覗かない」
「よろしい」
そう言って、一葉は満足気に笑ったのだった。
▼▼
「くはーっ、やっぱ露天風呂はいいぜ!なんかあれだな、大自然と一つになったような感じがするよな!」
温泉に入るなり、嬉しそうに叫ぶ狭。
「そうか。お前と一緒にされた大自然もきっと嘆き悲しんでることだろうよ」
「……なぁ安良。前から聞きたかったんだが、お前には俺を馬鹿にするプログラムでも入力されてるのか?そうなんだろ?」
「あぁ。よく分かったな」
「マジで!?」
そんないつものやり取りを聞きながら、僕も露天風呂を堪能していた。
旅館自慢の露天風呂には、ラッキーな事に僕達以外は客はおらず、遠慮なく広々と場所を使って入れた。
話もしやすい。
と、狭がまた口を開いた。
「……いやぁ、それにしても温泉っていいよな」
「ま、それには大いに賛成だな」
「だよな。……さて、そろそろ作るか」
「は?『作る』って……何をだよ」
「何って……温泉卵」
「帰れ」
安良、一撃で切り捨てた。
「いやいや待て安良、俺が温泉のある宿をとったのはこの為だと言っても過言じゃないんだぞ?」
「そうか、宿に謝れ。だいたい卵が無きゃ…」
「家から持ってきた!」
「「マジで!?」」
特殊スキル、同時ツッコミ発動。