投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

純白の丘
【初恋 恋愛小説】

純白の丘の最初へ 純白の丘 0 純白の丘 2 純白の丘の最後へ

純白の丘-1

「というわけで、今日勉強したところテストで出るからちゃんと復習しとくように。ではまた明日。」
終業のチャイムとともにクラスのほぼ全員がノートと教科書を、鞄にしまい片付けながらざわめき始めた。
テストまで一週間もないはずなのに、なんだこのいつもと変わらぬ光景は。
とは思いつつも自分もその一人なのだと気づき少しにやけてしまった。
「優斗君?」
むむ、にやけてしまったのがばれたのかと内心ひやひやしながら隣を見た。
「優斗君。今日も帰り一緒に帰ってほしいんだけど都合大丈夫?」
「ああ、いいよ。」
彼女は、俺の隣に住む桐山明日香。小学校からの幼馴染みである。なんでわざわざ俺に一緒に帰るのを頼むかというと、実は小学六年生の時に高熱で倒れその時の後遺症で目が見えなくなってしまったのだ。
医者が言うには手術すればどの程度か解らないが視力は戻ると言われている。
もちろん明日香は手術をうけるつもりみたいだが、いまだその様子もなく五年が過ぎて今は高校生だ。
しかも俺が思いを寄せている。一緒に帰るときたら喜んでいつもお供している。
「良かった。じゃ今から帰れる?」
「おう、大丈夫。んじゃ帰るか。」
もちろん明日香は俺が思いを寄せている事など気づいてもいないと思うが。
明日香はまるで目が見えているかのように容易に鞄をとり立ち上がった。
鞄とは逆においてある盲目者用の白い杖をこれも同じく持ち上げた。
視線は確かに少しずれているが、俺が立ち上がり明日香に近寄ろうとすると、また目が見えるかのように口を開いた。
「さっいこ?」
左手で鞄を持ってやり右肩に明日香の左手を置かす。いわば俺が目の代わりとなる。
そんなに早い歩行速度ではないが、教室を出ると見慣れた顔が近づいてきた。
「よっ、神崎!明日香ちゃん。今から帰るん?」
「その声は、樋口君?そうなの、優斗君と帰るとこ。」
樋口司。中学校からの友達で俺達二人のことをよく知っている奴だ。
もともと兵庫県に住んでいたため関西弁でよく騒いでいるが、信頼できる奴。こいつだけには俺の恋の相談をしている。
「そうなんや、気ぃつけて帰らなあかんで。特に神崎には。」
「お前に言われたくない。」
「おお、そりゃどうも。お前も頑張れや。」
そう言い残して手を振りながら逆の方向に歩き出した。
「優斗君、何を頑張るの?」
「あっえっ〜と、た、多分テストの事だよ。きっと。さっ帰ろ?ね?」
軽く誤魔化して歩き始めた。言われなくても頑張ってると明日香に聞こえないように呟いた。
もちろん頑張るというのはテストではなく、明日香との関係の事なのだが。
靴を履き替え校門の外に出た。いつも思うが学校から一歩出ると何か解放感がどっとくる。
明日香を見るといつもと同じように手を肩に乗せゆっくりついてくる。
「もうすっかり寒くなってきたね。十月も中頃を過ぎるとやっぱ冬なのかな。」
明日香は表情を変えずに尋ねてきた。
「そうだな、俺は基本的に冬は嫌いだな。寒いしすぐ暗くなるし。」
ん?まて十月の中旬?何か大事な事を忘れているような。
俺は心の中で考えるも思い出せない。
「なあ明日香。今日何日だっけ?」
「今日?16日だよ。10月16日。」
16日かぁ。やはり思い出せない。何度も何度も考えてみたが答えがでない。
その雰囲気を読み取ったのか明日香は少し笑った。
「何かおかしい?」
聞くと次は顔をふくらましすねた顔をして答えた。
「あ〜、やっぱり忘れてる。今日10月16日は私の誕生日だよっ!」
「誕生日・・・。」
ああああああぁ〜!!!しまった。今日は明日香の誕生日だ。
やってしまった。せっかくの誕生日一緒に帰れたのに。
すると明日香は笑いながら口を開いた。


純白の丘の最初へ 純白の丘 0 純白の丘 2 純白の丘の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前