保健室のヒマワリ-3
「いってぇーーー!!」
傷口に勢いよく塗られた消毒液の痛みに俺は我に返った。
「だから滲みるって言ったじゃ無い〜」
痛がる俺を見て、先生はまた豪快に笑った。
俺……、何しようとしてた?
先生へ延びた手で、思いっきり空気を握った。
痛みを堪える為なのか。
感情を抑える為なのか。
俺には分からないけど、傷口とは別に、俺の胸も少し痛んだような気がする。
「さぁ、もう大丈夫よ」
パチンッ。
と手当を終えた俺の足を軽く叩いて、先生が立ち上がる。
「ありがとうございます………」
手当が済んだと言う事は、ここに居る理由が無くなると言う事。
残念な気がして、寂しくなった。
「高木君。明日もいらっしゃいね」
「え………?」
「足。明日もちゃんと消毒した方が良いから」
「はいッ!!」
【明日もいらっしゃい】
明日も来て良い理由をくれた。
俺は嬉しくなって、思っきり力が入った返事をしてしまった。
「体育会系は返事がしっかりしてるわね〜!!」
先生がまた笑った。
あぁそうだ。
陽に照らされて笑う先生は、ヒマワリの花に似てるんだ。
保健室の窓から見える、中庭のヒマワリが先生の笑顔とリンクする。
「先生、じゃあまた明日ッ!!」
「さようなら。また明日ね〜」
擦りむいて痛かったはずの足は、魔法がかかったように痛く無くなった。
妙に嬉しくなった俺は、羽根が生えたみたいに軽い足取りで校庭に戻った。
校庭ではサッカー部のみんなが後片付けをしている所だった。
「高木お帰り。大丈夫だったか??」
俺に気付いたキャプテンが声をかけてくれた。
「はいッ!大丈夫っす」
満面の笑みで答える俺は、さぞかし不気味に見えただろう。
そんな事はどうでもいい。俺は浮かれた気持ちを隠し切れなかった。