保健室のヒマワリ-2
「え……?えぇぇーッ?!」
いきなりガバっと勢いよく先生が起き上がった。
「うわぁッ!」
あまりにもいきなりだったから、俺は驚いて声を上げた。
「…………見た?」
俺に向かって先生がバツが悪そうに聞いて来た。
「……見たって?」
寝顔の事かな?
なんだか後ろめたい気がして、すぐに答える事が出来なかった。
「お願ぁいッ!!!校長先生には内緒にしててね!!お願いッ!!」
先生が手を合わせて頭を下げた。
「ぷ…ッ」
なんだかその姿が可笑しく見えて、俺は思わず笑ってしまったんだ。
「あははッ!!先生居眠りしてたの〜??」
「ダメだと思ったけど、遅くまで深夜番組見ちゃったのよね〜」
そう言って顔をくしゃくしゃにして、大きな口を開けて笑った。
“ドキンッ”
まただ。
俺の心臓が高鳴った。
急速に顔に熱が昇るのが分かる。
俺、先生相手に何ドキドキしてんだよ。
目の前で大口を開けて豪快に笑う女の人が、【先生】だと言うことに少しだけガッカリした自分が居た。
「やだっ!!ちょっと足血が出てるじゃないッ。早くあそこに座りなさいッ」
俺の足から滲み出ていた血を見つけて、急に先生らしい口調で椅子に座るように言った。
なんだか現実を見た俺は大人しく椅子に座った。
「派手にコケたのね〜。部活は何?え〜と…」
「高木です。高木陽(タカギ ヨウ)。サッカー部ですよ」
先生が俺の前にしゃがんだ。
先生からはふんわりシャンプーの甘い香りがした。
「ちょっと滲みるわよ」
先生の香りに酔っていた俺に、そんな言葉は耳には入らなかった。
甘い香りのする長い髪の毛に無意識に手が延びたその時だった……