喫茶バニラ〜フランケンシュタインの恋@〜-2
「まだ二時か…。げっ、すげー汗。 」
いやな夢を振り払うために、シャワーを浴びに脱衣所に向かう。
脱衣所でぐっしょり濡れたTシャツを脱ぎ、鏡を見る。
継ぎ接ぎだらけの顔にスキンヘッド。
レスキュー隊に保護されたときには、体中にやけどやガラス片が刺さっていて、かなりひどい状態だったらしい。
まぁこんな風貌だから、付いたあだ名は『フランケンシュタイン』
小学校の時から友達なんて、一人も出来たことがない。
もちろん彼女も出来たことがない。
見慣れた顔から目をそらし、冷たいシャワーを浴びると幾分すっきりした。
冷蔵庫からビールを取り出し、一気に飲み干す。自慢じゃないが、俺は酒がめっぽう弱い。
アルコールのお陰でふわふわする体をベットに横たえ、そのまま眠りに落ちた。
喫茶店バニラ
何とも甘ったるい名前だが、ここが俺の職場だ。昼はランチを出し、夜は酒も出す。
椅子やテーブルは年代物が多く、レトロで小さな喫茶店だ。
ここのマスターのしげさんは、天涯孤独の身となった俺を拾い、育ててくれた。
いわば育ての親だ。
俺はこんな風貌だから、まともな就職先が決まるはずもなく、高校卒業後からこの店を手伝っていて、今はほとんど一人で店を仕切っている。
しげさんはもう高齢だから、最近ではあまり店には顔を出さない。
カランカラン
「いらっしゃい。」
無愛想にそういうとカップを磨き始める。
「健太くんは相変わらず無愛想なんだから〜。ブレンドとホットサンド頂戴。」
カウンターに座った女は頬杖をつきながらにっこりほほえんだ。
この人は常連の美佳さん。茶色のストレートロングの髪。豊満な体に黒のぴったりとしたスーツがよく似合う美人だ。口元のほくろがセクシーで、いかにもキャリアウーマンという出で立ちだ。
俺の顔を怖がらない客の一人だ
無言でホットサンドとブレンドを用意する。ブレンドコーヒーの香ばしい香りが店中に広がっていく。
「ホットサンドとブレンドでございます。」
そう言い終えたと同時にドアベルが鳴った。
「いらっしゃい。」 そこには小柄な女性がたっていた。
肩に掛かるくらいのウェーブのかかった栗色の髪に、小動物を思わせる丸い目。
始めてみる客だ。この店に新しい客が来るのは珍しい。立地条件も悪いし、古ぼけた店だ。さらに、カウンターの中にいるのは『フランケンシュタイン』ときたら普通の人は寄りつかない。
来るのはほとんど常連ばかりだ。
彼女は俺の顔を見て驚いているようだった。
無理もない。