抑えきれない女-1
滑らかなシーツに脚をすべらせながら、新藤さやかはゆっくりと眼を開けた。
ああ……今日もすごく淫らで素敵な夢だったわ……。
しなやかな指が身体を這い、その指先が静かにパンティの中へと入っていく。
陰毛を掻き分けながら下っていくと、乾いた表面とはうらはらに、陰唇の奥にある内肉はネットリとした蜜をいやらしく湛えていた。
さやかの唇が、朝から悩ましい吐息を吐きだしていく。
「あはぁぁ……」
数本の指で大陰唇のふくらみをモミモミと柔らかく揉みあげると、秘芯から快美な掻痒感が湧き上がってくる。
さやかは、消え入るような声で切なく鳴きながら、ゆっくりと瞼を閉じた。
まだ覚めやらぬ頭で、おぼろげな夢をなんとなく思い出していく……。
次第に昂ぶっていく感情に合わせ、思い出せない部分にはうんと卑猥な妄想を貼り付けた。
淫欲の痺れるような波が、じわじわと秘芯以外の性感へも蔓延しはじめていく。
さやかは、Tシャツを胸元まで捲り上げ、形の良い乳房を剥き出しにした。そして、パンティも邪魔くさそうに脱ぎすてていった。
新藤さやか、二十四歳。
大手商社のOLをしており、いまの婚約者とは今年の十月に挙式予定だ。
肩まで伸びたサラサラの黒髪はどこか古きよき時代の日本女性を思わせ、若干太めの眉に、パッチリとした瞳には長い睫毛が艶やかに伸びている。目尻が垂れているせいか、気品ある顔が少し幼く見えてしまうが、それがまたいい。
一見、すらりとした肢体。だが、意外にグラマラスなことを、一緒に着替えたことのある女性社員らは知っている。
ハキハキとした明るい性格は社内でも好印象で、もし婚約者がいなかったらすぐにでも男性社員たちから猛烈なアタックを受けてしまうのは必至だろう。いや、実際に、婚約者がいることを承知の上で交際を申し込んできた輩もこれまでに何人かいた。
順風満帆のように思えるさやかの人生……だが、実は誰にも言えぬ大きな悩みを彼女は抱えていた。
セックス依存症……アルコールや薬物依存症と同じで、心の空虚感を埋めるため為に性衝動を自分でコントロールできなくなっている状態。
まず、オナニーの回数が増えた。
それから日に日に妄想癖が強くなっていった。
どうしても我慢出来ないときは、ゆきずりのセックスさえ行うこともあった。
幸せな家庭に生まれ育ち、恋愛に関してもステキな思い出しかない。こういっては何だが、男に不自由したことはこれまでに一度もなく、さらには潔癖症の気を持っている。本来なら、そんな彼女にゆきずりのセックスなど出来るはずもなかった。
なぜ自分がそうなってしまったのか……原因がまったく分からない。
いつしかさやかは、完全にセックス依存症へと陥っていたのだった。
すでに日課となっている寝起きのオナニーを終え、美脚を開いたまま余韻に浸るさやか。しばらくすると、深い溜息が口をついた。
オナニー後、必ずといっていいほど訪れる嫌悪感。そのたびに自分を軽蔑して止まない。もう止めようと固く決意するも、朝になればまた当たり前のようにオナニーに走ってしまう。
どんなに強く思っても、自分ではもう欲情を抑制するなど出来なくなっていた。