多分、救いのない話。-6--9
『――――』
映画のエンディングテーマが聴こえる。いつの間にかうたた寝してしまったようだ。
「…………」
夜は遅いが、眠る気になれない。悪夢が怖かった。故に意識は、現実と夢の境目を行ったり来たりしている。
――母は気付いてくれるだろうか。慈愛の願う事。その為に何をしようとしているのか。
気付いていたら、どうするだろう。願いをきいてくれるだろうか。それとも、今度こそ、棄てられるだろうか。
分の悪い賭けだった。慈愛の切り札は、本当にジョーカーそのもので、慈愛自身どう働くかはわからない。だが、もう後がない。
「……先生」
無意識に、それこそ慈愛自身が気付かない程に小さく、呟いていた。
「……ごめんなさい」
(…………)
だけど、その声は聞こえていた。
小さくても、ちゃんと届いていた。
大人達の罪は、何もしなかった事。
ただそれだけの、救いのない話。
(――――)
意識が虚ろになる中で、毛布をかけられた。そんな気がした。