夏、そして夏。Goal!!-4
「風太くん、‥っ、お待たせ!」
チーちゃんはそう言ってあたしの背中を押した。
「ぅわっ、えっ!」
ガチャン――
重い更衣室のドアが閉まった。
「ちょっとー、チーちゃん開けてよー」
中から開けようと必死に押したが、外からも押さえ付けているようだった。
「はぁ‥」あたしは仕方なく諦めた。
あ――。
後ろには風太がいる。
視線を感じる。
急に心臓がどきどき鳴り始めた。
「こっち向けよ。久々に会うんだから‥」
そ、そうだよな。
やっと会えるんだ。
ずっと待っていたんだ、この日を。
あたしは笑顔をつくり、意を決し振り返った。
「へへっ。久しぶりだ‥ねぇ‥」
風太は真っすぐにこっちを見ていた。
昔の幼さは消え、大人びた顔つきをしていた。
な、なんか言ってよ〜っ
笑っている自分が恥ずかしくなった。
沈黙が恐くなり、あたしは切り出した。
「か、かっこいいでしょ?!コレ。」
あたしは首にかかっている金メダルを突き出す。
「ああ。」
風太はやっぱりそう言って見つめるだけだった。
あぁ、もうダメだ‥
プチっと、
音が聞こえたかのようにあたしの緊張の糸は切れ、両目から大粒の涙がこぼれた。
「ふぇーんっ」
6年前の夏、「金メダルを取ったら」「全国で待ってる」風太と交わした約束。
あたしはそのためだけに過ごしてきた。
「全国」という壁は本当に高かった。
中学に入ってすぐ、その壁からは落ち、やっとのぼりつめた。
やっと会えた。
会いたかった――。