夏、そして夏。Goal!!-3
「どこいくんですかー?あたしも行きますー」
「うん、更衣室に戻るのー」
チーちゃんはスキップしながら言った。
女子更衣室のドアを開けようと手をかけた瞬間、うしろから大きな歓声が上がり思わず振り返った。
どうやら、男子の100m自由形の決勝が終わったらしい。
その時だった――。
ガンっ!!
ドアが開き、あたしの後頭部を打ち付けた。
「‥‥ったあぁ!」
あたしはあまりの痛みにその場にしゃがみこんだ。
「ほぉ。大斗のヤツ、やっぱりやりおったな。
‥‥あ。」
後方頭上から男の声がした。
前を見上げると、チーちゃんが目を丸くし、口をパクパクさせている。
「ようっ!チー!!」
また男の声。
え?
チーちゃんの知り合い?
いや、あたしも知っている声だ。
あたしは立ち上がり、振り返った。
そこにいたのは、
風太だった。
あたしの知っている風太よりも遥かに背の高い、
でも間違いなく、
風太だった――。
「お前、来んの遅すぎ」
目の前にいる風太はあたしにそう言う。
「え、誰なんですか?この人、チー先輩たちのお知り合いなんですか?」
後ろで恵那ちゃんがそう言っているのが聞こえた。
「ふえぇーん」
あ。チーちゃんまた泣いてる。