夏、そして夏。Goal!!-2
「日向さん、おめでとうございます。さっそくですが、インタビューよろしいですか?」
あたしはここでさらに実感した。優勝したんだなぁ。
「今、伴コーチから伺ったんですが、中学の時からココを狙っていたそうですね?」
そうだ。あたしは中3の時に伴ちゃんにお願いしに行ったんだっけ。
どうしても一番になりたくて。
そうだ。小6のあの夏から、あたしは全国を、一番を目指していたんだった。
「‥いえ、12歳のときからです。金メダルが欲しくて今までやってきました」
あたしは答えた。
そうだ。あたしは一番になったんだ。
風太に会えるんだ――。
あとの質問には、なんて答えたかは覚えていない。
風太に会える。
いつのまにか、100m自由形の表彰式は終わっていた。
あたしの胸にはあのころよりも一回りは大きいメダルが光っていた。金色に、光っていた。
風太に会える、の?
表彰式を終えたあたしに、伴ちゃんとチーちゃんが近づいてきた。
チーちゃんはまた泣いていた。
「麻ちゃん、あのね」
「風太にソレ持って会いに行ってこい。大阪の、第一高だ。この会場にいる」
いる、いるんだ。
風太がこの会場のどこかにいる。
「麻ちゃん、行こ」
チーちゃんがあたしの手を引き、伴ちゃんがあたしの背中を押す。
会えるんだ――。
「あ‥あた‥し、髪ボサボサだ。どうしよ‥っどうしよ、チーちゃん!」
「じゃ、じゃあとりあえず髪乾かしに行こうか!」
伴ちゃんは大声出して笑っていた。
更衣室に向かう途中、後輩の恵那ちゃんに会った。
「麻さーん、おめでとうございます!」
「ありがとう」
「よかったですね、夢かなって。」
うん、そうなんだー。
やっとね、やっと会えるんだー。
あたしは、そう皆に言って廻りたかった。