夏、そして夏。side F-2
そして去年の夏、やっと「日向麻」の名前を見つけることが出来た。
久しぶりに見た麻は、すごく大人になっていた。
ドキドキした。
でも会うことは出来なかった――。
そして今年の夏。
目の前のプールでは女子100m自由形決勝が始まろうとしていた。
「…第2コース、日向麻」
向かいの観客席から歓声がおこった。そこには伴ちゃん、そしてチーの姿が見えた。
おぉ、チーも一緒だったのか。
2コースか…
決勝のコースは真ん中から予選でのタイム順になっている。
世界選手権で見るような顔触れが並んでいた。
決勝だ、何があるか分からない。
――パーンッ!!‥
一斉に8人がスタートした。オレは自然と拳を握り締めた。力がはいる。
麻っ!行けっ!!
がんばれっ!!
ほぼ横一線だった。
勝負はこれからだ。
50mターンをした後からだった。会場の歓声がさらに大きくなった。やはり3、4コースが抜け出てきたのだ。
いや、麻も必死でついてきていた。
ついてきている。
残り25m。
『あさっっ!!』
並んだ。
2、3、4が横一線になった。