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がんばれ!松本くん
【コメディ 恋愛小説】

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がんばれ!松本くん-7

学校に戻ってきた俺は中澤さんの姿を探した。夏で日が暮れるのが遅い事もあって、校庭ではまだ野球部が練習をしていた。
俺は3階に駆け上がり教室のドアを開けた。

「中澤さん」

教室に入ると、机の上で足を組んで俺を睨みつける中澤さんの姿があった。

「遅いんだよ!何時間待たせんだ!モンブランはどうした?」

俺は中澤さんに歩み寄り肩を力強く掴んだ。

「それ所じゃないんだ!中澤さん、お頭と付き合ってくれ」
「はあ?誰だよ、お頭って」

中澤さんは今にも俺に殴りかかってきそうな勢いだ。しかしそんな事は関係ない。ここで中澤さんを説得しなければ全てが台なしになる。

「あ?なんだお前、汚いな……なんかベタベタしてるぞ」

中澤さんは気持ち悪そうに俺の手から逃れようとする。俺は全てを認める事を決意した。

「中澤さんには本当の俺を見てほしい……俺は納豆フェチだ!犬フェチでもある!そして、底のないマゾヒストだ!」

全く話が見えないといった様子で中澤さんは俺を凝視する。しかし、当の俺にも全く理解できていない。俺は本当に納豆フェチなのか?犬フェチなのか?マゾなのかは置いといて……けれど、何度も疑いをかけられている内に認めてしまった方が楽かもしれないと思ってしまった。

「だから、俺のフェチに免じてお頭と付き合ってくれ」
「なんでだよ!全然関係ないだろうが!」

全くもってその通りなのだが、中澤さんがお頭と付き合う意外に上手く行く方法がない。

「中澤さん、君がお頭と付き合わなければ俺は君と付き合えないんだ!」
「言ってる意味が全然分かんねえんだよ!」

中澤さんの踵落しが俺の頭に命中した。崩れ落ちる俺の横を通り過ぎ、教室を出ていく中澤さん。
ああ、俺は一体何をしてるんだろう。
暫くして教室のドアが開いた。机の間に寝転がる俺に数人の同級生が近づいてきた。

「松本、中澤さんとはどうなったんだ?」
「モンブラン買いに行ったんだろ?」

野郎の声が耳元でこだまする。
モンブラン?そうだ……俺はモンブランを手に入れようとしてたんだ。ああ、なんて馬鹿なんだ俺は。当初の目的を忘れていた。

「もう駄目だよ。俺は嫌われた」

俺はうっすらと目に滲んだ涙を拭った。

「なに言ってんだよ松本。頑張れよ!」
「そうだよ頑張れ!諦めたら終わりじゃねえか」

俺は起き上がり、同級生を見据えた。諦めたら終わり、そうだよな。ここで負けたら駄目だよな。
おもむろに立ち上がる俺に同級生が声援を送る。頑張れ松本。頑張れ松本。
俺は教室を飛び出した。中澤さん、もう一度君に。56回目の告白をする為に。


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