SLOW START ]〜海原悠樹〜-3
「まぁたやってきたの〜?マジありえない」
「本命いるくせに年下くんからかって…そのうち痛い目みるよ〜」
…本命?年下くん?
「仕方ないし〜マサト仕事忙しいみたいで相手してくんないから欲求不満なんだもん。ユウキは顔とモノだけはいいからね〜」
先輩の声だった。
「女って怖〜い」
「だってね〜事実だから。ユウキ何でも言うこと聞いてくれるし顔だけは良いからペット並みには好き〜」
落としそうになったカバンをなんとか持ち直し、玄関に向かう。
教室からはまた馬鹿笑いが聞こえてくる。
…は…なんだそれ。俺ペットかよ…
帰り道、悲しさよりも悔しさの方が湧き上がり工事中の看板を思いっ切り殴った。
…俺は顔以外価値なしか…
切るのは簡単だが悔しさから、先輩が卒業するまで関係を続けた。
先輩の他にも来る者拒まず、去る者追わず…
女はみんな同じ。
女なんか信じない。
本気でなんか好きにならない。
やるだけやったら終わり。
高校三年間は今考えると最低な男だったと思う。
大学へ行ってからは少し落ち着いた。
が、特定の彼女を作る気にはならなかった。
…きっと死ぬまでこのまま…女なんて信じられないんだろうなぁ…
と呪文のように唱えていた。
社会人になり環境が変わった。
職場は男ばかり、恋愛なんて無縁のむさ苦しい会社だった。
ただ不思議と何かから解放されたような楽な気分になれた。