ウソ×C-1
基本メソメソするのが嫌いな質で、どんなにヤな事があっても気が済むまで泣けばそれで立ち直れる。
ただ、今回ばかりはそうなるまでに時間がかかったけど。
朝、目覚めた場所は玄関だった。どうやら泣き疲れてそのまま寝たらしい。
全身と目が痛い…
今何時?
ゴソゴソと携帯を取り出して時間を確認。
…9:30。
「会社始まってんじゃん…」
呟いて、またその場に倒れた。
人生初めての無断欠勤。社会人に有るまじき行為だ。
でも罪悪感はない。
このまま会社辞めちゃおうか。あいつらがいる職場になんか戻りたくない。
あいつらの―…
『いいから聞け!』
小松、あの後何を言おうとしたのかな。あんな真剣な顔で…
じんわりと涙が浮かんで、また泣きそうになって
「あーーーーっ」
力一杯叫んだ。
泣いてどうする。
あたしは行動する女!
とりあえず、風呂に入るぞ!!
乱雑に服を脱ぎ捨て、全身を清める様に念入りに洗いあげた。
それからのあたしの動きは速かった。
まず、やつらが使ったと思うだけで嫌悪感を感じてしまうベッドをリサイクル業者に持って行ってもらい、布団やシーツは燃えるゴミ袋の中にぎゅうぎゅうに詰め込んだ。
部屋中ピカピカになるまで掃除して、他人の痕跡を消した。
主任に触られたという理由だけで、美容院に行って髪をバッサリ切り落とした。
管理人さんに鍵の付け替えをお願いして、前の合鍵を使い物にならなくした。
最後は携帯の解約。
完璧。
お金はかかったけど悔いは無い。
見たか、あたしのこの行動力。ザマーミロ、バーカ!
「…ふん」
なんて虚しい心の叫びだ。
やつらにとってはどうだっていい事だろうに。
さて、夜になる前に布団買いに行かなくちゃ。ついでにご飯食べて息抜きして…
忘れよう。
ジタバタして思い付く限りの事をして、できる事なら、無かった事にしたいから。
帰りは大荷物だった。
寝具一式と衝動買いした洋服。それに新しい携帯。
今日一日でいくらくらい使ったんだろう。
いや、あたしは悪くない。こんなに無駄遣いしたのはみんなあいつらのせいだ!
自分の中で責任転嫁して、真っ暗な部屋の中に足を踏み入れた。布団を引きずって奥に進んで、部屋の照明を点ける。
「おかえり」
「ただい…ぬぁっ!?」
自然な声掛けに吊られてこっちまで自然に返事をしかけた。
こここまつっ
小松がいる。
何でこいつはいつもいつも突然あたしの前に現れるの?それより、
「どうやって入った!」
「これ」
それは昨日主任に返していたうちの合鍵。
「主任から分捕った」
鍵の付け替えは明日の予定。
しまった、大至急って言えば良かった。