Stealth@-7
「播磨重工……軍需、重機、航空、宇宙産業、特に軍需と宇宙産業は独占的な企業だな…」
「そう。その播磨重工から〈ある機密〉を盗みだしてもらいたい」
「リスクは?」
「目一杯」
「期限は?」
「1ヶ月後…としようか」
高鍋の言葉に恭一はため息を吐いて周りを見た。小学生の頃、放送室で見たような吸音材に囲まれた壁が目立つ。
「話を聞かせてくれ…」
恭一の言葉に、高鍋は大きく頷き、ブループリントの図面をテーブルに広げた。
「ターゲットは播磨重工の最上階にある電算室。そこのコンピュータに収められた技術データだ」
そう言った高鍋はポケットからタバコを取り出すと火をつけた。その落ち着きの無さに、不審感を持つ恭一。
だが、それを腹に収めて彼は高鍋に訊いた。
「しかし、コンピュータのデータなら外部からのハッキングで得られるんじゃないのか?」
「普通の双方向受信ならな。そのコンピュータは、一方通行なんだ」
恭一は驚いた表情を見せる。
「つまり、データの送り込みは出来るが呼び出しは出来ないと?」
「そうだ。データの呼び出しをするには、電算室に行ってコンピュータに直接アクセスするしかないんだ」
(そこまでして守る情報とは、普通じゃないな)
「その経路のチェックは?」
恭一の質問に、高鍋は傍らに置いたA4サイズの書類を広げて確認すると、図面を指さした。
「まず、電算室専門エレベーター。次が電算室外扉、そして最後に内扉の三重にチェックされる。
次にチェック方法だが、入室者の眼球網膜、それにシュラーゲ(識別カード)、そしてアクセスコードだ」
「そのアクセスコードは同じか?」
「いや。アクセスコードは隔週で変更されている」
高鍋の説明に、恭一は小さく口笛を吹いた。
「まるで軍の暗号並みだな…当然、電算室にもトラップは仕掛けてあるんだよな?」
「何故、そう思う?」
高鍋のわざとらしい問いかけに、恭一は苦笑いを浮かべる。
「〈社員〉に対してこれほどのチェックをやるんだ。〈外部侵入〉に対しても万全の対策をしてると考えるのが普通だろう」
険の有る言葉に今度は高鍋が苦笑いを見せたが、すぐに真面目な表情に戻った。