Stealth@-5
「ああ…例のクライアントへの報告に行ってたんだ」
美奈の顔がパァッと輝く。
「でっ!どうだったんです!?」
「バッチリさ。10日以内に30万振込まれるから…」
「よかった〜〜!」
美奈はホッとした表情を見せた。
「これで事務所の家賃も払えるし、私のバイト代ももらえる…」
「まぁ、しばらくは食い繋げるな」
美奈はあきれ顔で恭一を見つめ、深くため息を吐いた。
「もうちょっと仕事して下さいよ。私のバイト代だって2ヶ月もらってないんですから」
恭一はコーヒーをひと口すすると、急に思い出したように美奈に言った。
「そう言えば次の仕事が入ってたぞ。今度も浮気調査だ」
「え〜、またぁ〜!」
美奈は渋い顔をすると、嫌悪感一杯の声を吐いた。
「この間もそう言ってラブホテルに連れて行かれて…もうイヤです!」
「仕方ないだろう。浮気現場を押さえるにゃ、中に入るしか…」
恭一は美奈を諭す。
「それにオマエとなら、素裸で2人っ切りでも勃たない自信があるから心配すんな!」
その途端、恭一の顔面目がけてアルミの灰皿が飛んできた。
素早くよける恭一。
「あぶねえな…ところで留守の間、連絡は?」
美奈はまだ膨れっ面のまま、1枚のメモ紙を応接セットのガラステーブルに叩きつけた。
「それっ!昼過ぎに有りました。不在と言ったら、また掛けるって!」
恭一はメモ紙を拾い上げた。そこには〈高鍋譲二〉と書かれている。
一瞬、険しい顔を見せた恭一は、すぐに元の表情に戻ると美奈の方を向いた。
「…遅くまでご苦労だったな。今日はもういいよ」
恭一の変わりようを美奈は不可解に思ったが、それ以上深く考えなかった。