Summer Day-7
「…分かった。じゃあ、帰るか」
総太を見送った後、戸締まりをして家を出る。
「ナオ」
「うん?」
「…おんぶ」
「……」
こいつ、初めからそれが狙いで総太を断ったんじゃねぇの?
そんな俺の気持ちをよそに、未だぶすっとした表情でこちらを見てくるサチ。
「…分かりましたよ」
全く、今日はろくでもない日だ。
「──お前、また痩せた?」
背中に乗った彼女は驚くほど軽く、俺は彼女に尋ねるが、彼女は曖昧な返事をしただけだった。
「ねぇナオ、さっき総太と何話してたの?」
「あー…」
帰り際、総太は俺の耳元で「2学期が楽しみですね」と囁いてきた。怪しげな笑みをうかべたまま。
「まぁ、大したことじゃないから気にすんな」
「ふーん」
サチの表情は分からないが、そろそろ眠いのだろう、返事が曖昧なものになっていた。
「何だかなぁ…」
俺は空を見上げる。
青空は夕日に染まり、朱い雲がたなびいていた。
後ろではサチがぶつぶつ寝言を言っている。
背中がじんわりと温かくなった気がした。
今日は、子供たちに振り回されっぱなしだったな。
1人苦笑しつつ、紅蓮の道を歩いていった。