夏、そして夏。side E-1
あたしは羨ましかった。
麻さんには、いつも気に掛けてくれるチー先輩がいて、専属コーチの伴ちゃんがいる。
でも嫌いになんてなれなかった。
唯原 恵那‐ゆいはらえな‐高校2年。水泳部所属。種目、背泳ぎ。
すごい集中力…
さすが決勝。
ここから見ていても、麻さんのオーラはすごい。
麻さんは予選を突破し、決勝へと進んだ。
あたしも今年は全国への切符を手に入れた。今日の午後、予選が始まる。
そりゃあ緊張するよ…
だけど、麻さんの応援をしなきゃ。
麻さんを見守りたい。
だって、
この日の、
この100mの為だけに、
1年やってきたんでしょ。麻さんも、チー先輩も伴ちゃんも。
よくは知らない。
だけど何かがあるのは分かる。
伴ちゃんが「今年はお前には見せない」と麻さんには大会プログラムを渡さなかった。
プログラムに何が載っていたら…
プログラムに何が載っていなかったら…
去年は予選敗退だった麻さんがあそこに並んでいる。
確かに去年とは違う、麻さんの表情、あのオーラ…
すごい事が起こりそうな予感。
「‥第2コース、日向麻」
決勝がスタートする。
あたしは観客席から叫んだ。
「麻さん!ファイトー!」