「プレゼント」-1
俺は、彼女との出会いを思い出していた…
彼女とはネットで出会った。
趣味が合い、毎日のようにメールをした。
暇さえ有れば、一日中でも電話で話をした。
いくら話しても、会話が尽きる事は無かった…
幸せだった彼女との楽しい日々。
それがまさか…
半年前。
「結婚式を挙げようネ〜」
そんな言葉を聞きながら、俺は限定発売される車のカタログを見ていた。
値段は640万円。
彼女はそんな俺を見て、笑いながら
これから結婚式を挙げるのに、 そんな高い車を買える訳ないでしょ〜と言った。
あれから半年たった今、その彼女は居ない…
火葬が終わり、彼女の骨を拾ってる時に、彼女の最後の言葉を思い出した。
もう私は多分駄目…
死んだら、タンスの一番上の引き出しを見て…。
彼女は白血病で、医師が俺だけに 余命半年だと告げていた。
俺はその時から、抜け殻のように生気を失った。
お互いが緊張しながら、初めて会ったあのファミレス…
仕事前に会って、カラオケをしたあの日…
公園のベンチで、彼女の手作りのサンドイッチを食べたあの日…
初めて彼女が膝枕をしてくれたあの日…。
こんなに人を好きになった事は無かった。
俺を一途に思ってくれた彼女。
誰よりも俺の事を心配してくれて、誰よりも俺を支えてくれた彼女。
タンスに手紙があった。
手紙と一緒に二人で笑って写ってる写真が大事そうに入っていた。
それを見た瞬間、彼女との思い出が走馬灯のように流れて、
一気に俺の目から涙が溢れた…
数日前の彼女の誕生日に渡したバラの花が
花瓶に入っていた。
初めて誕生日にバラを貰ったと喜んでいた彼女は今は居ない…
俺は彼女の最後の手紙を読んだ。