夏の始まり、夏の終わり(後編)-4
「理屈では無理って分かっていても…信じてやってみるもんだなあ」
彼は本当に嬉しそうにそう言ってくれた。
私は彼のその表情に心苦しくなったが、避けては通れないとも思った。
本当のことを知られて嫌われても仕方がない…と。
「私ね、結婚していたの。東京にいたころ…」
私はごまかしたくなかった。
嘘をつきたくなかった。
だから、単刀直入にそう伝えた。
「うん」
彼はその言葉に肯定も否定もせず、ただ頷いた。
「でもね、他の人を好きになって…」
「うん」
「言いたくはないけど、不倫だよね、ただの…」
どんなに過去を綺麗な言葉で表現しようとも…
結局私のしてきたことは倫理に反していた。
しかも、そんな倫理に反した関係でさえ真剣に向き合ってくれた…
若かった男の子すら、すぐに裏切った。
男にだらしないとか…そんな簡単な言葉では許されないと思った。
私は、出来るだけ端的に過去の事実を彼に告げた。