夏の始まり、夏の終わり(後編)-2
「何が食べたい?」
彼と私は、いつしか親しい間柄での言葉を交わすようになっていた。
「何でもいい」
「遠慮しないでね。店探すの得意だから」
彼は、私に媚を売るわけでもなく自然に気を使ってくれる。
「他の女の人にも、そう言ってきたの?」
私は、いじわるだ。
こうやって、自分の過去を棚に上げ彼に憎まれ口を叩きたくなるのだ。
「かっこつけたかった頃は…」
彼は正直にそう言う。
でも、その正直さが私の心を優しく包む。
「君は、素直だから」
「え?」
私は彼の意外な言葉に驚いた。
私のどこが…素直だというのだろうか。
「洒落た店…っていうんじゃ、誤魔化せないから」
「そういうお店、田舎者だから苦手なだけよ」
「上辺だけだと見透かされそうで…」
彼は、苦笑いしながらそう言う。